奥のほそ道

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奥のほそ道

  • ISBN:9784560096291

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内容説明

ブッカー賞受賞!「傑作のなかの傑作」と絶賛
過酷な〈死の鉄道〉建設と、ある女性への思い
1943年、タスマニア出身のドリゴは、オーストラリア軍の軍医として太平洋戦争に従軍するが、日本軍の捕虜となり、タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」(「死の鉄路」)建設の過酷な重労働につく。そこへ一通の手紙が届き、すべてが変わってしまう……。
本書は、ドリゴの戦前・戦中・戦後の生涯を中心に、俳句を吟じ斬首する日本人将校たち、泥の海を這う骨と皮ばかりのオーストラリア人捕虜たち、戦争で人生の歯車を狂わされた者たち……かれらの生き様を鮮烈に描き、2014年度ブッカー賞を受賞した長篇だ。
作家は、「泰緬鉄道」から生還した父親の捕虜経験を題材にして、12年の歳月をかけて書き上げたという。東西の詩人の言葉を刻みながら、人間性の複雑さ、戦争や世界の多層性を織り上げていく。時と場所を交差させ、登場人物の心情を丹念にたどり、読者の胸に強く迫ってくる。
「戦争小説の最高傑作。コーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』以来、こんなに心揺さぶられた作品はない」(『ワシントン・ポスト』)と、世界の主要メディアも「傑作のなかの傑作」と激賞している。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

starbro

216
2014年度ブッカー賞受賞作ということで、読みました。リチャード・フラナガンは、初読です。死臭が漂う私小説的戦争文学、傑作中の傑作までとは思いませんが、心にぐっさり突き刺さって来ます。戦争犯罪は当然悪ですが、戦争自体が悪であることを再認識しました。LOVE&PEACE 2018/08/23

ケイ

155
いい文学には、ノスタルジーが偏在する。私にとってのこと。子供の頃にみた大人の号泣する姿、本屋で出会った青い瞳、死への行進へ選び出した病人たち、無垢な痩せさらばえた身体が打ち据えられる音、ベッドで横たわるエイミーにきかせるユリシーズ。ジャングルの中も埃っぽい部屋も薄暗く、ホコリや煙を浮かび上がらせる一筋の微かな光。薄暗い細道の奥にみえる光はどこに続くのか、記憶につつまれながら思索に耽るのは、どこにだれといても孤独がぬぐえないから。一人だと思うものたちは何かを求めて本を読む。何かを書くものたちも、きっとそう。2019/09/09

藤月はな(灯れ松明の火)

113
リチャード・フラナガン氏の父は日本軍の捕虜として泰緬鉄道敷設に従事していた。そこでの日本軍による捕虜達の仕打ちは余りにも苛烈だったと言う。そんな地獄を過ごした父への想いとそれに関連した人々への鎮魂に満ちた作品。被害者も加害者も生き残った者たちは過去に囚われ続けなければならなかった苦さが残る。日本軍に意見できる医師として従事しながらも捕虜たちを助ける努力に対し、疑問と不信を抱き続けたドリゴ。自分が信じ、それしか道がないと思った為の罪を自覚し、それでも悔い改めないヌノカワの姿に残りの人生を煩悶したナカムラ。2018/12/08

しいたけ

108
太平洋戦争に軍医として従事し日本軍の捕虜となったドリゴ。タイとビルマを結ぶ「死の鉄道」建設の地獄。父親の体験を基に、リチャード・フラナガンは12 年かけて、この長い物語を書き上げたという。分厚い本だが、儚い壊れ物のように感じた。熱帯のジャングルで、人間と悪魔の線引きがあいまいになる怖さ。静かな語り口が、胸に刺さる刃物の長さを増す不思議。ブッカー賞受賞作品。2019/05/17

NAO

107
「死の鉄路」泰緬鉄道建設。その過酷な現場に居合わせたオーストラリア人捕虜たちと日本の司令官たちの極限状態での生活、破綻しそうな精神状態を冷徹な視線で描く。雨季のジャングルのどうしようもない湿気、泥の中でもがくように死んでいく人々。そして、物語は戦争が終わっても終わらない。戦争が終わっても、彼らの生活が終わるわけではないからだ。また、この話は、戦争についてだけ書かれているのでもない。戦争による喪失と、愛の喪失。優しさ、偽り、暴力、嘘、狂気、欺瞞、そういったものからなる心の闇。その闇の、なんと深いことか。2018/09/13

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