内容説明
結婚して、子供を儲けて、ささやかながら幸福な家庭を築く。おそらくそんな将来が待っていたはずの男、西澤祥太。僕の恋心は、祥太から“普通”の幸せを奪ってしまった。報われた恋も、消えかかった愛も、届かなかった想いも、みな切なく胸を焦がす。映画化で話題『君の顔では泣けない』著者が贈る、心震える恋愛群像劇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
えんちゃん
58
なんだろう。ずっとモヤモヤ読書。ゲイの柏木と異性愛者の西澤。男性カップルを取り巻く友人・知人・家族たち。それぞれの心情を細やかに描いた連作短編集。LGBT以前の問題。個々の人間性に寄り添えなかった。嫌いだな。理性では理解していても感情が拒絶してしまう親の葛藤が響いた。同性カップルも良いじゃんと言いつつ、いざ自分の子供・配偶者・親がそうだといったら狼狽えませんか?そこにも焦点を当てた君嶋さんの公平さが光る。最後は西澤の章が読みたかった。天真爛漫なんだか鈍感なんだか。2025/12/12
よっち
27
自らの恋心は彼から普通の幸せを奪い去ってしまった。報われたはずの恋も、消えかかった愛も、届かなかった想いも、みな切なく胸を焦がす恋愛群像劇。結婚して子供を儲けて、親から祝福されながらささやかながら幸福な家庭を築く将来が待っていたはずのノンケの祥太と一緒になれて、幸せなのに不安も罪悪感も消えてくれない文也。彼の視点を中心に関係者の想いが複雑に絡み合っていくストーリーは、もしかしたら違う選択肢もあったのかもと思うのは仕方なくて明確な正解はないものの、それでも祥太が最後に見せる小さな仕草には救われる思いでした。2025/12/09
糸巻
26
元々ノンケの祥太を恋人に持つゲイの文也、祥太の元カノ美里、祥太の後輩・宮川、祥太の父親、文也達の行きつけのゲイバーのママ。それぞれの視点で描かれる群像小説。6話収録の連作短編集。文也で始まり文也で締める。主に同性カップルの2人についての物語だ。お互いをただ好きなだけではずっと一緒にいられない。ゲイの文也からすると、自分と出会ったことで祥太の〝フツウ〟の未来を壊してしまったような後ろめたさを抱えて苦しい。自分より相手の事を考えていて優しいな。ゲイバーのママのエピソードが印象的。素敵な恋に出会えるといいのに。2025/11/15
akiᵕ̈
25
付き合って三年の同性愛者の文也と異性愛者だった祥太。祥太の両親、元カノ美里、後輩の宮川、ゲイバーのママと、二人の周りの人たちの視点から描かれている連作。世間で認められつつある同性愛者カップルだけど、色んなしがらみが付き纏い、特に両親の複雑な思いや葛藤にはツラいものがあるし、ゲイバーのママの両親との関係、同棲者との関係、お店の店子問題も生き辛さがてんこ盛りで、最後にとった行動はその抱えている心の叫びの現れだったんだろうね。当事者たちの問題だけど、深く傷つく人たちもいるという現実はついて回るよね。2025/12/14
あやっぴ
25
昨今、LGBTQを扱った小説をよく目にするが、こちらもそうでした。同性愛者である文也と、元々は「ノンケ」であった祥太。そもそも私は「ノンケ」という言葉も分からなかったのだが、この二人がどのように出会い、その関係を周りの友人や家族にどう伝えるのか。登場人物それぞれの目線で丁寧に描かれ、理解できた。二人は真逆な性格のように見えて、繊細で愛情深いところは似ていると思った。2025/12/12
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