内容説明
行方不明になった小学四年生の娘。交友関係を知ろうと、部屋を調べ始めた母親が見つけたものは……(「裏山」)。写真サークルで出会った女性に近づくわけは……(「運命の天使たち」)など、各世代の女性を主人公に繰り広げられるミステリ短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ちょろこ
99
珠玉の短編集の一冊。さすがの読み応え。一話読むごとに面白さがぐんぐん上がっていく全七話。相変わらずどれも最初の一文からざわざわしてくる。"今"に疲れている女性達を感じながら、すぐそばの現実を感じながら、そのざわざわが次第にざらざらに変わりゆく感覚がたまらない。そしてミステリらしく、それまで見ていたものが鮮やかに姿かたちを変えた時、ざらざらの粒が一気にさらさらと流されゆく。でもね、一粒だけ残るのよ、小さなざらざらの欠片が…。それが何とも矢樹さんらしくて、やっぱりしっかり感嘆の吐息。女の心は実に深い、面白い。2025/09/23
タイ子
62
7つのミステリ短編集。どれも面白い。何よりラストで見せる物語のオチがそうだったのか!って思わず唸ってしまう。「3年目の帰還」は冒頭、兄嫁から兄の遺骨が見つかった知らせがあり、そこから物語は遡って主人公が嫁いできてからの暮らしが語られるわけだが、最後に全てが見えて来る予想外の面白さ。タイトルの「罪の棲家」は姉妹が相続する家を売るという三女。絶対家を解体してはならぬという父の遺言で長女は猛反対。家に何か秘密があるのか?腰くだけになりそうな結末。どれも矢樹さんの巧さと読者が喜ぶツボを心得ている作品集。2025/09/20
小説を最初に書いた人にありがとう
51
やはり、矢樹純は天才だと思う。短編ミステリーでありながら出だしから心をざわつかせ、どういう結末を迎えるのかと気持ちを鷲掴みにしながら、想像を超える結末で驚かせる。結末がおどろおどろしい作品やイヤミスと言われるオチは他の作家でも見るが、時には感動したり、痛快だったり、清々しかったり変幻自在なのは矢樹純だけだと思う。タイトルにもなった罪の棲家、最高でした。2025/09/15
akiᵕ̈
23
子供から年配まで、その女性たちが隠し持っていた真実をあぶりだす7話の短編集。誘拐された娘のとった行動の読みが母の描いた通りだったら恐ろしい「裏山」、中途半端な嘘をつくクラスメイトに振り回された「嘘つき犬」、写真サークルで偶然目にした写真から仲良くなった女性に別荘に誘われ、そこであの写真に隠されていた驚愕の真実を知ってしまった「運命の天使たち」、父が亡くなり実家の処分で揉める三姉妹の結末が見ものだった表題作の「罪の棲家」が中々にゾワーっと。2025/09/08
らなん
13
矢樹さん15冊目。2025年、文庫。短編集。どの話も、一筋縄ではいかない要素が詰まっていて、読みごたえがあった。少女が行方不明になる「裏山」、家庭内暴力「ずっと、欲しかった女の子」、虚言癖の女友達「嘘付きと犬」、ゲームでの揉め事「吸血鬼の■し方」4編は、隠された闇に慄いた。夫がいない婚家に住む義兄嫁「三年目の帰還」、ガレージに腐乱遺体「運命の天使たち」、3姉妹の遺産相続の行方「罪の棲家」は、スッキリした。余りにも早く読了してしまい、残念でもある。2025/09/24