内容説明
“動かない基地を問う
13の国と地域を比較分析。基地の歴史, 基地問題, 地位協定, 沖縄への含意――学知の先に現実的な選択肢はあるか。
◎ 「歴史」の縦軸と「海外との比較」の横軸。2つの軸から現実を捉えなおすことで, “動かない沖縄の基地問題の解決策を探る。
◎ 2021年刊行の専門書『基地問題の国際比較』の反響をふまえ, 比較対象数も増やしてさらに発展させつつ一般読者向けにコンパクト化。
◎ 欧州/中東・アフリカ/アジア・太平洋/米領にある基地を比較し, 歴史や基地問題, その解決に向けた政策, 地位協定の要点を解説。
目次
はしがき[川名晋史]
序章 基地と世界[川名晋史]
第1章 沖縄[池宮城陽子]
第Ⅰ部 欧州
第2章 デンマーク/グリーンランド[高橋美野梨]
第3章 ドイツ[森啓輔]
第4章 スペイン[波照間陽]
第Ⅱ部 中東・アフリカ
第5章 トルコ[今井宏平]
第6章 サウジアラビア[溝渕正季]
第7章 ジブチ[本多倫彬]
第Ⅲ部 アジア・太平洋
第8章 韓国[石田智範]
第9章 豪州(オーストラリア)[福田毅]
第10章 フィリピン[大木優利]
第11章 山口[辛女林]
第Ⅳ部 米領
第12章 グアム[齊藤孝祐]
第13章 プエルトリコ[大澤傑]
あとがき[川名晋史]
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
nranjen
3
沖縄だけで基地問題を考えるのでなく、他の米軍基地と比較することで沖縄の特色を浮かび上がらせている。素晴らしい視座と画期的な取り組みである。その規模の大きさ重大性重要性は沖縄が他をはるかに引き離して群を抜いているが、デンマーク、ドイツ、スペイン、トルコ、サウジアラビア、ジブチ共和国、韓国、オーストラリア、フィリピン、プエルトリコ、グアムなど、それぞれの歴史や条件をたどることで沖縄が浮かび上がるようになっている。国じゃないけど岩国も登場している。司法権、基地返還はあの手この手でたゆまず求め続けるべきだ。2024/10/02
FIRBO
2
米軍は世界に600から800地点に基地を置いている。そこで疑問なのが、世界の米軍基地のなかでその質と量とともに圧倒的な上位を占める日本は、なぜここまで「本土」に比べて沖縄に残している割合が大きいのかという点である。そもそも本書の趣旨は、世界に目を向けることで、沖縄の基地をめぐる「二項対立」的で「厄介」な議論を超越しようというものである。ところが、世界に目をやればやるほど、皮肉にもこの国が沖縄に基地を押しつけつづけてきたその異様さが浮かび上がってくる。米軍基地問題は、やはり日本問題なのだ。2023/10/23
中将(予備役)
2
各国の米軍基地や地位協定の事例研究を一般向けに簡潔に紹介した一冊。ジブチの章の日本とジブチの地位協定や協定の本質は特に面白かった。沖縄の負担が重く、合意や軽減が進んでいないことは事実だが、一方でかつてデンマークのグリーンランドにはかなり非対称な関係が存在していたり、韓国の戦時指揮権を巡って駆引きがあったり、基地と住民の距離が遠い国もあったり、環境問題としてとらえるドイツがあったりと各国基地問題の多様な広がりも意識すべきと感じた。2023/01/31
Yuka
2
学術書だからと身構えたけど読みやすいし、何より面白い。 事例研究の本は各著者の知見に触れられても、情報が拡散しがちで本の全体から得られる情報がぶれがちだけど、この本は各章において【沖縄への含意】に触れていることで、日米関係ではなく世界という横軸での基地問題を考える視点を提示していて、アメリカの軍事戦略上の一つの基地という広い視点を新たに持って、必要な軍備は何か、適した場所は、適した条件は、と整理してきちんと対話をしていくことが次なる一歩になるのかなと思う。2022/09/28




