内容説明
ある春の晴れた日、モスクワに悪魔が現れた。黒魔術の教授を名乗る悪魔は、グラスでウオッカを飲む巨大黒ネコら手下を従え、首都に大混乱を巻き起こす。一方で文壇の権威に酷評され絶望に沈む巨匠。彼に全てを捧げるマルガリータは純愛を貫くべく悪魔の助けを借りる。スターリン独裁下の社会を痛烈に笑い飛ばし、人間の善と悪、愛と芸術を問いかける哲学的かつ挑戦的な世界的ベストセラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
沙羅双樹
7
現実と幻想、愛と悪が交錯する不思議な物語だった。モスクワに現れる悪魔ヴォランドの騒動は風刺的でありながら、人間の本性を鋭く照らしている。特にマルガリータの愛の力が、絶望の中でも希望を見いだそうとする姿に深く心を動かされた。石井訳は、ロシア文学の重厚さを保ちながらも軽やかで読みやすく、ブルガーコフの皮肉と詩情が見事に伝わる一冊だった。 2025/10/28
Ryo0809
4
20世紀ロシア語文学の傑作の名高い作品。幻想と純愛、神と悪魔、理想と現実…。ユーモア溢れる描写は、単なる笑いではなく、スターリン体制への批判を痛烈に浮彫にする。人間の欠点のなかでも「臆病」は最も恥ずべきことの一つとした作者の視点、「原稿は燃えない」という深遠な言葉。この作品に込められた作者の祈りは、とてつもなく大きい。物語としても第一級の面白さがある。2025/11/10




