内容説明
ある春の晴れた日、モスクワに悪魔が現れた。黒魔術の教授を名乗る悪魔は、グラスでウオッカを飲む巨大黒ネコら手下を従え、首都に大混乱を巻き起こす。一方で文壇の権威に酷評され絶望に沈む巨匠。彼に全てを捧げるマルガリータは純愛を貫くべく悪魔の助けを借りる。スターリン独裁下の社会を痛烈に笑い飛ばし、人間の善と悪、愛と芸術を問いかける哲学的かつ挑戦的な世界的ベストセラー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
rinakko
9
新訳で再読。頗る面白かった! スターリン体制下のモスクワが、春の夕暮れに忽然と現れた悪魔の一味に引っかき乱される。あれよあれよと大混乱に陥る人々の狂騒ぶりと不条理な展開に、おおブルガーコフだ…と楽しくなった。保身に走り右往左往する役職者たちの描かれ方、その扱いは容赦ない。一方、愛する巨匠のためなら何でもするマルガリータの勇気は悪魔も称える(でも全○にする必要なくねw ゲーラもだけどw)。小説家の祈りのような「原稿は燃えない」という言葉について、思いめぐらす読後感だ。2026/01/26
沙羅双樹
9
現実と幻想、愛と悪が交錯する不思議な物語だった。モスクワに現れる悪魔ヴォランドの騒動は風刺的でありながら、人間の本性を鋭く照らしている。特にマルガリータの愛の力が、絶望の中でも希望を見いだそうとする姿に深く心を動かされた。石井訳は、ロシア文学の重厚さを保ちながらも軽やかで読みやすく、ブルガーコフの皮肉と詩情が見事に伝わる一冊だった。 2025/10/28
Moish
6
水野忠夫訳以来。もともとそれほど難解ではないが、この訳はより読みやすい。悪魔ウォーランドの取り巻きの個性が際立ち、洒落や皮肉がすんなり頭に入ってくる。いま、ショスタコーヴィチの評伝も並行して読んでいるので、スターリン時代の文芸界の事情がよくわかったことも、功を奏してたかもしれない。でも実は、この本の中で最も好きなのは、ポンティオ・ピラトの物語だったりする。当時のエルサレムやピラトの心中が目に浮かぶような生々しい描写。謎めいたアフラニウス隊長。この物語だけでも十分に1冊になりそうなクオリティ。2025/12/04
yukihirocks
5
「時代背景」「風刺」等の側面によって高く評価されているような作品は、個人的には余りピンと来ないというか、そういったハイコンテクストな要素で作品を評価する姿勢にはどこか衒学的な匂いを感じてしまう。早い話、訳知り顔の野郎に講釈されても、浅学な自分は「んなの知らねえよ!」と言い返したくなるし、仮にその情報や意義といったものを納得できたとしても、どこか心の底に”しこり”のようなものが残る。その点、本書はソビエト体制に対する揶揄・風刺が盛り込まれているらしいが、そういった事情を知らなくともこれ単体で十分に楽しめた。2025/12/09
Ryo0809
5
20世紀ロシア語文学の傑作の名高い作品。幻想と純愛、神と悪魔、理想と現実…。ユーモア溢れる描写は、単なる笑いではなく、スターリン体制への批判を痛烈に浮彫にする。人間の欠点のなかでも「臆病」は最も恥ずべきことの一つとした作者の視点、「原稿は燃えない」という深遠な言葉。この作品に込められた作者の祈りは、とてつもなく大きい。物語としても第一級の面白さがある。2025/11/10




