内容説明
雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏手で、菊之助なる若衆が果たした見事な仇討。白装束を血に染めて掲げたるは父の仇、作兵衛の首級(しるし)。二年後。目撃者を訪ねる武士が現れた。元幇間、立師、衣装部屋の女形……。皆、世の中で居場所を失い、悪所に救われた者ばかり。「立派な仇討」と語られるあの夜の〈真実〉とは。人の情けと驚きの仕掛けが、清々しい感動を呼ぶ直木賞・山本周五郎賞受賞作品。(解説・中島かずき)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Kanonlicht
266
若侍による父のかたき討ち。その一部始終を見ていたという芝居小屋関係者の供述により、当日の出来事が次第に明らかになっていく。一つの事件を追うミステリーでありながら、芝居に生きる人たちの来し方にもスポットが当てられ、各章独立した短編としても楽しめる。江戸市中のエンタメとして人々に親しまれた芝居だけど、遊郭と並ぶ悪所とされた側面もあり、そこに集う人たちにも並々ならぬ苦労があったんだなと。だからこその義理人情に触れて、心が温かくなった。2026/01/09
エドワード
238
江戸幕府は父や兄など尊属を殺害された場合のみ、仇討ちを公認していた。仇討ちは届出制で、事が成った時は現地の役人の検分を経て、仇討ちと認められた。仇討ちが成就しない限り藩に帰参できない決まりであった。そこで、物語。木挽町芝居小屋の裏手で仇討ちあり。伊納菊之助が父の仇、作兵衛を斬る。二年経ち、ある武家が芝居小屋・森田座の面々に話を聞く。木戸芸者の一八、殺陣師の与三郎、裁縫師のほたる、小道具の久蔵、戯作者の文治。あの仇討ちは不自然、出来すぎている。大江戸ミステリーの開幕だ。作兵衛は何故菊之助の父を斬ったのか?2025/11/07
里愛乍
207
映画化において、文庫本にて再読。つくづく構成が凝っている。章ごとに主要人物が語って聞かせる、木挽町の仇討ち事件、それと同時に一癖も二癖もある語り手の生い立ちも見え、徐々に明るみになっていくことの真相。この敢えて読み手(聞き手)に分かりやすい展開になっているのがまたいい。それにしても脚本はこの<語らない主役>をこうもよく作り上げたものだと感心する。今月号のシナリオに載っている脚本を併読し、原作と読み比べてみてもう一度映画を観たくなった。2026/03/04
maekoo
195
仇討ちでなく何故あだ打ちなのか!? 全て読めば解る! 江戸の悪所芝居小屋のある木挽町の雪降る日菊之助と言う元服前の若侍が父の仇を見事打ち取った仇討ち事件…。 その顛末の真実を様々な目撃者を訪ね紐解いていくある武士…。 ただの敵討ち物語でなくそこに関わる様々な何かを抱えた人々の想いと情を描く素晴らしい時代劇! 血みどろの仇討ちに隠された爽快な内容は読んでのお楽しみ! 歌舞伎に関わる様々な演目や関連事が見事に物語に色を添えている! 26年2月27日全国公開映画原作を公開10日前に読了す文学賞W受賞の名作!2026/02/17
まえぞう
136
しばらく積ん読だったので、映画の方が先になりましたが、原作も楽しく読ませてもらいました。最後の解説にもありますが、映画にするなら確かに構成は変わるよなと思います。現代でも、多くの人がここで武士の理とされるものと同じようなものにとらわれているんだろうと思うと、なかなかに深みのある物語ですね。2026/03/30
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