内容説明
雪の夜、木挽町の芝居小屋の裏手で、菊之助なる若衆が果たした見事な仇討。白装束を血に染めて掲げたるは父の仇、作兵衛の首級(しるし)。二年後。目撃者を訪ねる武士が現れた。元幇間、立師、衣装部屋の女形……。皆、世の中で居場所を失い、悪所に救われた者ばかり。「立派な仇討」と語られるあの夜の〈真実〉とは。人の情けと驚きの仕掛けが、清々しい感動を呼ぶ直木賞・山本周五郎賞受賞作品。(解説・中島かずき)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
81
江戸幕府は父や兄など尊属を殺害された場合のみ、仇討ちを公認していた。仇討ちは届出制で、事が成った時は現地の役人の検分を経て、仇討ちと認められた。仇討ちが成就しない限り藩に帰参できない決まりであった。そこで、物語。木挽町芝居小屋の裏手で仇討ちあり。伊納菊之助が父の仇、作兵衛を斬る。二年経ち、ある武家が芝居小屋・森田座の面々に話を聞く。木戸芸者の一八、殺陣師の与三郎、裁縫師のほたる、小道具の久蔵、戯作者の文治。あの仇討ちは不自然、出来すぎている。大江戸ミステリーの開幕だ。作兵衛は何故菊之助の父を斬ったのか?2025/11/07
Kanonlicht
80
若侍による父のかたき討ち。その一部始終を見ていたという芝居小屋関係者の供述により、当日の出来事が次第に明らかになっていく。一つの事件を追うミステリーでありながら、芝居に生きる人たちの来し方にもスポットが当てられ、各章独立した短編としても楽しめる。江戸市中のエンタメとして人々に親しまれた芝居だけど、遊郭と並ぶ悪所とされた側面もあり、そこに集う人たちにも並々ならぬ苦労があったんだなと。だからこその義理人情に触れて、心が温かくなった。2026/01/09
かしこ
73
映画化、歌舞伎化(この語句は適当ではないけど)されるとのことで、興味があり購入。 初めての作家さんだったので、ちょっとふあんがありつつ、意外とすんなり読めてよかった。 どんどん読み進んでいくと、実は…の展開があって引き込まれました。 おすすめするとしたら、江戸時代のミステリー本って扱いになるかなあ。 同じ作家さんの別作品にもむくむくと興味が湧いてきました。2026/01/13
RRR
67
僕は時代小説は読まない方です。でも単行本が出た当時、賞を取ったということで、興味を持ったのです。それ以来の再読。時代小説に馴染みがない人でも、きっと楽しめます。ミステリー仕立てで進みますが、真相が明かされた時、後から涙が溢れて、胸が張り裂けそうになったほど。何という切ない真相なのか、と誰が読んでも落涙するんじゃないかしら?○○の矜持が素晴らしいと思う。心に残る時代小説、あなたも読んではいかが?2025/10/17
セシルの夕陽
66
あー、面白かった! 決着の予想はついたが、そんなことは些細なこと。江戸後期、芝居町の木挽町であった仇討ち。国元から江戸へ来た菊之助が、父の仇:作兵衛を斬った事件。2年後に詳細を検証したいと来た武士。その武士に、仇討ちの様を5人の語り部たちが証言する。武士の道を貫く人、武士を捨てた人、身分が低いとされた人。それぞれの人生物語も話を盛り上げる。人外・悪所といわれていた芝居町が、敷居が高い歌舞伎へとつながり、梨園と呼ばれ一目おかれている昨今も興味深い。何度か目頭が熱くなった、清々しい読了感✨ 直木賞受賞作⭐️2025/11/12




