内容説明
「文明の裁き」――東京裁判を始めとする対日戦争犯罪裁判を、原告である旧連合国はそう位置づけた。そのなかで、戦犯とされた日本人はいかにして西洋文明という異文明に対峙したのか。膨大な法廷速記録をはじめとする諸史料を丹念に読み解き、「曖昧な答弁で責任追及をはぐらかす日本人戦犯」という丸山眞男流のイメージは誤りだったことを明らかにする。また、西洋側の判事・弁護人にも日本の理解に努めた者がいた。その苦闘の跡から、「文明」の内実を問いなおす。戦犯裁判の実像に迫る研究を積み重ねてきた著者の代表作にして、山本七平賞受賞作。
目次
序章/第一部 東西国際軍事裁判の被告たち/第一章 丸山眞男「軍国支配者の精神形態」批判/第二章 責任は回避せず──松井石根大将と南京事件/第三章 「私人の間の気がね」と「腹藝」──東郷茂徳外相の論理/第四章 西の責任、東の責任──ヘルマン・ゲーリングと東條英機/第二部 東京裁判をめぐる群像/第五章 竹山道雄と東京裁判/第六章 レーリング判事の東京裁判と日本──『東京裁判とその後』を読む/第七章 こだまするハル・ノート批判──パル判事の反オリエンタリズムとアメリカの良心ノック/第八章 正義は海をこえて──ベン・ブルース・ブレークニ弁護人/第九章 文明批評家 東郷茂徳──『蹇蹇録』と併せ読む『時代の一面』/第三部 異土の裁きの場で/第十章 河村参郎中将の対英思想闘争──『十三階段を上る』を読む/第十一章 君子ニ三樂アリ──戦犯の慈父 今村均大将の回顧録/終章 戦争と文学と文明と/主要参考文献/あとがき/文庫版へのあとがき/索引




