内容説明
山本さんによって清麿の謎がひとつ解かれたと考えるべきだろう――
【巻末解説:葉室麟】
「この刀はおれです。おれのこころです。折れず、撓まず、どこまでも斬れる。そうありたいと願って鍛えたんだ」
信州小諸藩赤岩村に生まれた山浦正行、のちの源清麿は、九つ上の兄真雄の影響で作刀の道にのめりこむ。
隣村の長岡家に十八歳で婿に入るが、刀に対する熱情は妻子をおろそかにさせるほどたぎるのだった……。
幕末最後の天才刀鍛冶、その波乱の生涯を描く!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
20
一芸に秀でるためには才能に加えその事に打ち込まなければならないことをわかりやすく書いています。刀鍛冶のことは知らないことばかりなので面白かったです。2020/12/26
なつきネコ@執事になる化け猫 全てのご主人様、お嬢様、紅茶をどうぞ☕
16
ものスゴい執念だな。刀鍛冶・源清麿の生涯を追った一冊。刀を作る事にこだわり、刀に全てをかけた情熱は尊敬する。ああ、いう刀を作ろうと夢想し、野心高く求め、女に雑に扱う清麿の姿が、人間らしくて良い。女の扱いや、恩人の清音にヒドイ、つるへの仕打ちは言い訳の余地なし。しかし、求めた刀の価値が彼の一生の言い訳だったんだな。鉄にこだわり、武用刀だけを作る清麿。直胤が安い鉄を使い、華やかな刃紋の刀を作る。まるで両者は対極。やがて、荒試しでの仕打ちの凄まじさの結果に出た。今、一番に評価がある刀を作った清麿だからこそ。2016/10/14
さっちも
13
刀鍛冶の話です。想像以上の面白さだった。著者が書く「技能の人」は職人かくあるべしと喝采を浴びせたくなる。 ただただ、自分の中の理想に迫る生き方に気持ちが熱くなった。2023/03/07
かぶき者
11
江戸時代、小諸出身の刀鍛冶の名工である清麿の足跡を描いた物語。信頼する兄を見習いながら、誰の弟子にもならずその腕一本でだけで並み居る目利きをうならせたという。後先考えず直情だけで動き、夜這いして夫婦になったにも関わらず、新たな腕試し先を見つけて出奔。その住み込み先の飯炊き女に惚れ込んでしまう。その女も放ったらかしで、長州藩に見込まれれば萩まで行ってしまう。置いてけぼりの女達は一体どうやって暮らしていたのかの方が気になるが、そこらは一切触れられず。この芸術肌は左利きだけでなくB型だったに違いない(褒め言葉)2019/11/20
myu-myu
9
「天職」なんだろうなと思う。思うように行動し、思うように生き抜いた男の生き様は、正直なところ納得はいかない。けれど、「この刀はおれ自身だ」という、彼が鍛えた刀に出会ってみたいと思った。2016/04/07