内容説明
「抑圧からの解放に向ける関心が私の研究を駆動してきた」.歴史学は,この日常,そして不条理なこの世界と地続きだ.だから,世界を変えたいと願うとき,歴史学には役割がある.抑圧の構造を読み解き,人びとの解放への夢を想起すること.そして,それらを開かれた言葉にすること.ラディカルな態度に貫かれた思索の軌跡.
目次
はしがき――不条理な世界における希望の所在について
Ⅰ 歴史学を架橋する
1 歴史学のアクチュアリティに関する一つの暫定的立場
2 「平成」はいかなる意味で時代区分たりうるか
3 連続と断絶の諸類型――近世・近代移行期日本の地域社会
4 「その程度」の歴史叙述――今井登志喜『歴史学研究法』をめぐって
Ⅱ 〈夢みること〉の歴史学
5 国民国家論と土地問題のあいだ――牧原憲夫の近代史像・再考
6 通史のなかの経済史家――武田晴人『帝国主義と民本主義』と『高度成長』
7 〈デモクラシー〉の夢と挫折
8 戦争・立身・ジェンダー――明治日本の基礎過程
9 アーカイブズは何とつながっているか――利用者の立場から
歴史学は世界を変えることができるか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
月をみるもの
12
クーデターで成立した明治政府において、アーカイブ(行政記録)と修史事業が一体となって始まった、、という話になるほど、、とうなずく。アーカイブは記録を残す事業、歴史家は残された資料を読んで歴史を描く仕事、修史事業はその間にあって直近の記録を残しつつ、現政権の正当性をうったえるためのストーリーを描く。書き手の立場にたったことがあるかどうかが、「読み」の精度に大きく影響することは言うまでもないだろう2026/08/23
チェアー
7
学問とは「自分を賢くし又世の中をよくするものである事」とする今井登志喜の言葉はすっと入ってくる。新しい事、社会的に大きな意義のある事(役に立つこと)でなくてもいい。自らが意義あるものと認め、学んで良かったと思うことを進める。それが学ぶことの本質だろう。 2025/10/10
pushuca
2
緻密な論集である。しかし世界を変える事が出来るか否かについては書かれていない。それが出来るならばそれはどのような歴史学かを模索している。2026/09/09
(ま)
1
小論文・講演集 不条理な抑圧に抗うため、言葉を読み、それを伝え、なにごとかを想起する2026/06/13
Master
1
著者がこれまで歴史研究にどう向き合ってきたかを過去の論考たどりながら論じたもの。『歴史学はこう考える』を頭の片隅に置きながら読み進めると良い。安丸の通俗道徳に、牧原の国民国家論、三谷のデモクラシー論などを通じ、近代日本がどう捉えられてきたか、どう捉えていくべきなのか、多くの刺激を受けた。また、タイトルにあるように、歴史学によって現代社会の問題を解決することは確かにできないかもしれない。しかし、解決に向けて問題の原因を考えるためにはやはり過去に遡って考えなくてはならない。歴史学はそのために存在するのだろう。2026/03/30




