岩波新書<br> スガモプリズン - 占領下の「異空間」

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岩波新書
スガモプリズン - 占領下の「異空間」

  • 著者名:内海愛子【著】
  • 価格 ¥1,034(本体¥940)
  • 岩波書店(2025/08発売)
  • 2025→2026年!Kinoppy電子書籍・電子洋書全点ポイント30倍キャンペーン(~1/1)
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  • ISBN:9784004320777

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内容説明

敗戦直後,GHQ占領下に開所したスガモプリズン.外の世界が大きく移り変わるなか,戦犯たちは獄中で何を思い,何を見つめていたのか.戦争裁判の実態,刑務所管理の構造,戦犯の自治や言論活動,そして朝鮮人・台湾人戦犯の問題.十数年に及ぶスガモ運営の全体像を描き,塀の向こうに置きざりにされた戦争責任を問い直す.

目次

序章 「大東亜共栄圏」の八・一五
アジアは東京時間で動いていた/焼け跡に開いた落下傘の花/捕虜引揚げの完了/三木清の獄死/「自由戦士」、歓迎される/「敗戦責任」をめぐる政争/「戦争犯罪人を処罰せよ!」/勝利者への卑屈な追従か
第一章 スガモプリズンの開所──逮捕と裁判
1 占領下の追及
戦犯容疑者の逮捕開始/「大物」たちの待遇/東京拘置所からスガモプリズンへ/逮捕の現場/恩給などの差止め
2 極東国際軍事裁判とBC級戦犯裁判
戦争裁判に向けた機構改革/東京裁判/アジア各地のBC級裁判/横浜法廷/次々に下る死刑判決/捕虜虐待への厳罰/多発した戦争法規違反/東京裁判の判決
3 戦犯の仮出所
減刑と仮出所の取り組み/遅れた「引揚げ」/仮出所の開始
第二章 塀の中の「自治」と「自主活動」
1 スガモの学園と新聞
重労働にあえぐ戦犯たち/自主活動と「スガモ学園」開校/『すがも新聞』の発行/どこまで書けるのか
2 主張する戦犯たち
日本人刑務官の管理へ/〝ノーモア・スガモ〟/タブーに触れる/「講和」への期待/初めての抵抗
3 真の「釈放」とは
心の糧としての文化活動/スガモのキリスト者たち/『信友』の創刊/釈放をめぐる葛藤や議論/「虚脱の空気」
第三章 受刑者たちの内なる声
1 平和条約と主権回復
調印の日が来た/「国内法上の刑ではない」/戦犯家族の援護/A級戦犯の出所、残されたBC級戦犯
2 巣鴨が問いかけるもの
自らの手で解明する/集められた刑死者の遺書/『世紀の遺書』の反響/死の受け止め方/巣鴨をゆさぶった一つの投稿/顕在化した思想対立/スガモ詣で
3 戦争責任のゆくえ
戦犯は犠牲者か/言論による活動/手記集の出版あいつぐ/無関心の壁をうち破れ/「彼ら」の眼を直視する/呼応する知識人たち/『私は貝になりたい』の衝撃/全棟大会の要求/「鉄鎖の身を平和のために」
第四章 プリズンの「異邦人」──植民地支配と戦争裁判
1 日本人ではない日本の戦犯
「大東亜共栄圏」からスガモへ/捕虜収容所に配置された朝鮮人軍属/同人誌『郷愁』の刊行
2 占領下ジャワの朝鮮人軍属
少年も抑留/「不純分子」たちの反乱/ジャワの空に流れる朝鮮語/裁かれた半数近くが朝鮮人軍属だった/スガモの中の朝鮮
3 「釈放」が突きつけるもの
出るも地獄/「やっかい」な問題/弁護士による救済活動/出所を拒否/巣鴨刑務所は閉鎖されたが
終章 巣鴨刑務所の閉鎖──その後に……
センパンか証人か/痛恨の念で振り返る過去/BC級戦犯を描いた二つの演劇/裁かれた者たちの記憶
スガモプリズン関連年表
主な参考資料・文献
スガモプリズンBC級戦犯刑死者(一覧)/BC級戦犯全員の起訴事実別件数/スガモプリズン全図

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

121
戦後の戦犯裁判は事後法の禁止という理念を無視した勝者による報復であり、敗者たる日本は甘んじて受け入れるしかなく、勝てると信じて戦争に突入した日本人の強大国幻想を打ち砕いた。スガモプリズンに収容された戦犯容疑者は名誉はおろか命を失う場合もあったが、同時に国際政治で弱い側についてしまった事実を痛感させた。スガモは明治以来の大日本帝国の理想を信じてきた政官軍エリートを再教育する学校であり、収容者は明日を生きるため学びの場を設けたり新聞雑誌を発行したのだ。岸信介はスガモを経験したからこそ首相にまでなれたと思える。2025/11/27

みさと

5
日本敗戦後、戦犯たちが収容されたスガモプリズン。1958年に閉所されるまでの十数年、外の世界が大きく変わる中、戦犯たちは獄中で何を思い見つめていたのか。制限付きではあったが自治と言論活動が認められていた。捕虜虐待の罪に問われたBC級戦犯たちは、戦争裁判にも戦争責任にもさらに再軍備を進める日本政府にも厳しい目を向けていた。連合国ではなく日本国民によって戦争責任を問う裁判を行うべきと考え、真の責任者を追求する必要を強く持っていた。そして、朝鮮人・台湾人戦犯の問題。未解決なまま今日まで持ち越した問題が多くある。2025/09/29

ウンにゃん

1
戦時中に日本兵たちが行った残虐な行為の数々をなかったことにはできない。しかし、侵略戦争を開始し、負けが分かっているのに無理に推し進め、国内外の多くの人々を死に追いやった人間は結局罪を裁かれることなく逃げおおせた。上の者たちは罪を逃れ、末端の人々に責任を取らせるこの国の悪しき伝統は今も昔も全く変わらず、弱き者たちを苛んでいる。この国はいつまで戦後でいられるだろうか?スガモプリズンの戦犯たちに、我々は顔向けできるだろうか?2025/12/11

伊達者

1
巣鴨プリズンと言えばA級戦犯が収容されたと思っていたがBC級戦犯も収容され、更に朝鮮人戦犯も収容されていたことを初めて知った。戦争裁判の実態を考えさせられた。日本が裁くべきだったといった安易な意見には同意できないが、戦争裁判の全体像を知ることは大切だ。保阪正康氏がアメリカに管理された巣鴨拘置所で死んだA級戦犯の内、先に死んだ永野、梅津、松岡の3人は謀殺の疑いが消えないと語っていた。日本人は3人の死の真相を知りようもなかったと。戦争裁判を考えたい。2025/09/29

takao

0
ふむ2025/10/01

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