内容説明
社会主義国の古本屋では、良い本は店頭より奥にしまい込んである。店主と打ち解け、バックヤードに入れるかどうかで勝負が決まる――
戦後第1回目の交換留学生としてプラハに降り立ったときから10年間、古書を探さない週はなかったという言語学者が、本と出逢う喜び、愛すべき店主たちとの交流をユーモラスに語るエッセイ。
〈解説〉阿部賢一
目 次
Ⅰ 沈黙の通訳
沈黙の通訳
その一語
壁
島
魚
スライムの終焉
津波のロンド
英語夜話
チェルニー博士訪問記
小さなバイリンガリストたち
Ⅱ プラハの古本屋
共産圏の古本屋・1
共産圏の古本屋・2
共産圏の古本屋・3
プラハの古本屋
続・プラハの古本屋
ほろ苦い喜び
ストラホフ図書館への招待
辞書との縁
チェコの匿名辞典
チャペックのコロンボ風探偵小説
もっと長い長いお医者さんの話
古本のプラハ・87
三つのミニコレクション
Ⅲ カルパチアの月
アドリアの海から
ワルシャワの秋
沖縄の熱帯魚
雨のプラハ
ウィーンの四日間
カルパチアの月
初出一覧
あとがき
解説
「古本」との新たな出逢い 阿部賢一
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
練りようかん
17
初めて古本屋を訪ねた1958年から25年が経つ80年代に書かれたエッセイ。店主と関係を深め人のつながりで稀覯本や秘話に触れる偶然の引き寄せと、取引は金というより持ち掛けた人にとっての等価交換に思える個人が引き寄せる逞しさの両方を感じた。50歳すぎてカフカスの諸言語に興味を抱き、そのためにグルジア語を学ぶ言語学者の著者は、本当に言語が好きな方なのだなと思った。旅やお酒を通した発見、社会主義国で家を建てる大変さは勉強になった。最も面白かったのは子供の命名で、選択肢の少なさから考える愉しさに昇華したのが印象的。2026/01/11
H2A
16
軽いエッセイかと思いながら読み始めるが、旧共産圏東欧の生活や書物をめぐる諸相が描かれて大変良い内容。西側にいるとつい色眼鏡でみてしまう世界が、逆に好ましいものにさえ映るのは、著者の一貫した旺盛な知的関心と書物愛があって、それに共感があるからと思う。自虐的になりがちな蔵書自慢というものとは全然ちがう。佐藤優の本でもそうした要素があったが、うらめしい。資本主義の荒波にもまれてプラハをはじめとする東欧圏も、今ではすっかり小綺麗に「効率的」な姿に変貌しているのだろう。そうなる直前の姿が垣間見えるからだ。2025/12/10
ふるい
15
共産圏の古本屋事情が興味深かった。欲しい本と出会うために何年も通って店主と親しくなったり、売買が禁じられている本は本と交換して手に入れたり。あと、チャペックを読んだことがないので、読まなければと思った。2025/12/05
真琴
14
言語学者である著者のエッセイ。 共産圏の古書店の営み方や本を手に入れるコツや苦労話が新鮮だった。違う国の文化や言語、日常生活などを本を通じてだけれど触れるのは面白い。上質なエッセイだった。 2025/10/29
みこと
9
何となく手にした本だったけど、読み終わってみれば予想以上に引き込まれた本だった。戦後第一回目の交換留学生としてプラハへ飛んだスラブ語が専門の言語学者である著者の、東欧あれこれ。言語学者らしく専門的な話もありちょっと読みづらい箇所もあったけど、そのうち引き込まれ止まらなくなった。共産圏、社会主義国で本を買い知識を得ることがこんなにも難しかったのかと驚く。今は簡単に電子で本が買えるけど、私はやっぱり紙の本がいいな。本、という形態が好きだと改めて感じたよ。そして言語学の面白さも。いろんな言葉を勉強したくなった。2026/02/17
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