内容説明
神社の境内には柔らかい笑みをたたえた地蔵菩薩がひっそりとたたずみ、ただ「乙女の碑」とだけ書かれていた。
その建立から数十年、終戦から73年の歳月が経った2018年、いわれを書き記した碑文が建てられた。
戦時下、国策により満洲に渡った岐阜県黒川村の黒川開拓団は、日本の敗戦が色濃くなる中、生きて日本に帰るためにと敵であるソ連に助けを求め、その見返りとして18~22歳の女性たちを差し出すことにした。
身も心も傷を負いながらも、帰国後は差別や偏見にさらされてきたが、女性たちは手を携えて堂々と声を上げ続けた。
そのいきさつが、四千文字でぎっしり刻まれている。
次に生まれるその時は 平和の国に産まれたい
愛を育て慈しみ 花咲く青春綴りたい
なぜ「あったこと」は「なかったこと」にされてきたのか。
歴史に残すことが何を生み出すのか――。
2018年に放送されたテレビ番組は大きな反響を呼び、2025年夏、映画化決定。
著者はディレクターとして、映画監督として黒川に足を運び続けた。
共同体が史実を認め、女性たちが尊厳を回復するまでを描くノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
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41
🌟🌟🌟🌟🌟。監督自ら書いたドキュメンタリー映画『黒川の女たち』の原作本。平井美帆の『ソ連兵に差し出された娘たち』と内容はほぼ同じ。平井美帆とは関係性があるようだがそこには触れていない。どちらともオススメだが、本作の方が約100頁ほど短いので読みやすい上に松原文枝の動画は色々あるみたいなので併せて鑑賞すれば著者の考えを知れる。縁があれば映画も鑑賞出来るので本作をオススメしておく。怒りの矛先を関係者同士やジャーナリストや作家に向けて行って一番都合が良いのは権力者達。彼らは黙って腹の中で笑ってるだけ。2025/12/03
山下奈绪
36
この本の一番心に残るところは、その“リアルさ”だと思います。 誇張もなく、読者に媚びるような装飾もなく、ただ静かに記録していくことで、女性たちがどんなふうに沈黙の中で耐え、向き合ってきたのかが見えてきます。 文章はとても素朴なのに、読み終えると深い余韻があって、“生活の重さ”を本当の意味で感じさせてくれる一冊でした。2025/12/09
Nobuko Hashimoto
27
映画「黒川の女たち」監督による著作。終戦後の混乱期、現地住民の襲撃から守ってもらう見返りにソ連軍への「性接待」を強要されたことをなかったことにはさせまいと声を上げた元満蒙開拓団の女性たち。世代や時代の変化もあって彼女らの訴えに耳を傾け、歴史に刻もうとする動きが生じる。勇気を出して声をあげた女性たちを、子や孫、ひ孫世代は敬愛し誇りに思い、それが女性たちの力になっていく様子が尊い。「性接待」がいかなるものだったか、女性たちが帰国後もいかに酷い目に遭ったかは、平井美帆『ソ連兵へ差し出された娘たち』が詳しい。2025/09/04
OHモリ
19
映画『黒川の女たち』に感動して原作本を購入。終戦直後、満州での性接待の実態を描くが、真の核心は被害女性たちが70年を経て実名で語り、尊厳を取り戻していく姿にある。碑文建立の経緯や戦中・戦後の権力構造も丁寧に描かれ、重くも読む価値のある一冊。涙が止まらなかった。2025/09/27
どら猫さとっち
16
日本敗戦が色濃くなった頃、攻めてくるソ連軍から満州開拓団を守るために、彼らが決断したのは、10代の女性たちをソ連軍に差し出すことだった。帰国した彼女たちは、周囲からの誹謗中傷に遭い、公表するなと沈黙を強いられた。時が経つにつれて、彼女たちはこれまで封印してきたことを語り始め、自らの人生を社会をも変えていく。封印から刻印へ。ドキュメンタリー映画『黒川の女たち』のすべてを一冊に。なかったことにはできない。誰も知らない戦争の悲しみに、目を背くわけにはいかない。2025/09/22
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