エクス・リブリス<br> 大丈夫な人

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エクス・リブリス
大丈夫な人

  • ISBN:9784560090732

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内容説明

欧米も注目する韓国の奇才による初の短篇小説集

日常生活で女性が襲われる理不尽と絶望を純文学に昇華し、韓国の女性を中心に絶大な支持を得ている女性作家、カン・ファギル。他者の行動の裏に潜む悪意を浮かび上がらせ、現代社会の“弱者”が感じる不安、絡み合い連鎖する不安の正体を自由自在に暴いてみせる。デビュー作「部屋」、若い作家賞受賞の「湖――別の人」、英国の翻訳家デボラ・スミスに注目され、英国で刊行された韓国文学の短篇集に収録されて大きな話題となった「手」など全9篇。
本書に描かれている世界と同様の閉塞的な社会を生きている日本の読者にも不安は迫ってくる。その背後に潜む差別意識や劣等感などに気づかされ、見えているものと見えていないもの、そして、何が真実なのかを突きつけられる。

「湖――別の人」:親友ミニョンの恋人で、周囲から「すごくいい人」と評判の男性イハンと湖に行くのがひどく憂鬱だった「私」。その湖は、ミニョンが暴行された現場だったから。イハンに何度も同行を求められ、彼を疑い続ける自分も信じられなくなってきた「私」は、ついに湖に一緒に行くことにするが……。
「ニコラ幼稚園――貴い人」:「ここに入れば出世する」と噂のニコラ幼稚園。下世話な噂も絶えないが、園児募集の時には毎年長蛇の列ができる。「私」は一人息子のために毎年並ぶ。読み書きを教えてもらえず惨めな思いをした自分の二の舞にならないように……。
「大丈夫な人」:婚約者の彼と車に乗っている「私」。彼は高収入の弁護士。「私」は母親が亡くなり質素な生活をしていたから、他人からはこの結婚が幸運に見えるだろう。だが今車内で「私」は不穏な何かを感じている……。
「手」:夫が海外赴任になり、小学校教諭の「私」は幼い娘を連れ、夫の実家の農村で姑と三人で暮らすことにする。農村の暮らしには違和感がつきまとう。田舎の小学校でもいじめがあり、手を打とうとするが、村人は耳を貸さない。村人が集まり、収穫した豆を町内会館で茹でる日。「それは『手のない日』でなければいけない」と言う姑に「手」の意味を尋ねると、村では悪鬼を「手」と呼ぶのだという。悪鬼とは、村に入ってきて、人に悪さをしたり邪魔したりする女のこと……。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

65
最初に読んだ時は日常に出喰わす、一瞬の隙に悪意に変わり得る違和感の礫を開示してくる「湖」にギブアップして止めていた。後日、「大仏ホテルの幽霊」が本書収録の「ニコラ幼稚園」について言及されていたので万全の心理状態にして再度、挑む。さて「ニコラ幼稚園」でのミヌへのやっかみを言うお母さんたちに私は思い出した。絵を描く事が好きだった私の絵を「子供っぽい」と言って怒鳴り、叩いた父。そのきっかけがあるお母さんの「こんな子供っぽい絵なんて」という言葉からだった事。その事を知った時、私は父の傍で言ったその女を呪いたかった2024/06/19

ネギっ子gen

60
【『大丈夫な人』の冒頭は「先週の日曜日、彼が私を突き飛ばした」の一文から始まる】デビュー作「部屋」や表題作など8篇を収録した原書は2020年に、翻訳版はそれに「手」を加え22年刊。『大丈夫な人』:<私は考えた、風だけが吹きすさぶがらんどうの心のまま彷徨って、最終的には無残に砕け散るんだろうと。そんなことは何となくわかるし、いずれわかることだった。どうしてだろう。自分に自信を持つことは、どうして彼を愛するよりしんどいことなのだろう。私は何があっても彼とつき合わないと心に決めた。確かにそのつもりだった>と。⇒2025/07/30

ヘラジカ

56
どの作品も読後に強烈な余韻を残す傑作短篇集。ありとあらゆる暗色のオーラを様々な物語、シチュエーションのなかで結晶化させる表現力に舌を巻いた。近しい者の暴力性や悪意、閉鎖的な社会風俗への恐れから、都市が壊滅するほどの未知の病原菌まで。微かな不安から紡ぎ出されるサスペンスは、明確な”出口”がないことで読者の心中に蟠り続ける。訳者あとがきにてその意図が解説されているが絶妙と言わざるを得ない。作中の不快感が読み手をも侵食していく素晴らしい短篇の数々。恐れ入った。甲乙つけがたいが収録作では「部屋」が一番好き。2022/06/02

アマニョッキ

45
『別の人』がとても良かったのでかなり楽しみにしていた本作。そんな呑気な我をめためたに切り刻んで何かの液で溶かして壁砂ぶち込んで繭で固めて三日三晩雨風に晒すくらいのポテンシャル持った作品でした。もう無理やしばらくダメージ引きずるかもしれん。『部屋』と『手』が抜群に。あと『虫たち』も。しんどすぎて途中で何度も投げ出そうとしたけど、今この手にこの作品が巡ってきたのも何かのご縁やと思ってがむしゃらにくらいついた。なかなかにおすすめしにくいが、作品の完成度は間違いなく高いです。体調良いときにどうぞ。2022/12/21

竹園和明

45
絶望的に重たく暗い。様々な状況下で不安や劣等感などネガティブな感情を抱えた人達。お隣韓国も日本同様、社会の疲弊ぶりが酷そうだ。…虫が這い回るような厭なざわつきがつきまとう。医学部に通う彼氏が購入した田舎に建つ一軒家に、彼と車で向かうミンジュ。実はその1週間前、彼女は彼に階段から突き落とされている。不慮の事故だと言うのだが…。不穏な空気を纏ったままの車中で次々起こる出来事にハンパない嫌悪を覚える。2人は次の春に結婚するそうだ(「大丈夫な人」)。立場的弱者を描く事で歪んだ社会を射る、強烈な悍ましさの9作品。2022/10/29

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