内容説明
◆デビュー10周年記念作品◆
大藪賞作家が描く
慟哭の犯罪ドラマ
あのとき、
もっと話せていたら
あの人を殺めずに、すんだのかな。
まだ引き返せる。
あなたがニュースになる前に。
【著者からのコメント】
目に留まる短いニュース。
憶測だらけのコメント。
肯定。否定。あふれかえる世間の声と、
拾われることのない当事者の声なき声。
先入観ほど怖いものはないけれど、
人間はそれを捨てられない
生き物なのだとも思います。
それを浮き彫りにする5篇を
書いたつもりです。
プロローグの「私」は、
作者の私かもしれませんし、
あなたかもしれません。
■自宅で血を流した男性死亡
別居の息子を逮捕
■マンション女児転落死
母親の交際相手を緊急逮捕
■乳児遺体を公園の花壇に遺棄
23歳の母親を逮捕
■男子中学生がはねられ死亡
運転の75歳女性を逮捕
■高齢夫婦が熱中症で死亡か
エアコンつけず
新聞の片隅にしか載らない、
小さな5つの事件。
その裏には、報道されない真相がある――。
【目次】
「夕焼け空と三輪車」
「そびえる塔と街明かり」
「ジャングルジムとチューリップ」
「まだ見ぬ海と青い山」
「四角い窓と室外機」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
322
どんな事件でもニュースは表面の事実を報じるだけで、当事者が人命を奪ったり死を選ぶに至る深い事情など知ろうともしない。そこには目を背けたくなる人の醜さ愚かさがむき出しで、彼らが一片の理性もなくルビコン川を渡ってしまう瞬間を情け容赦なく描き出す筆致は心臓に悪いほどだ。一寸の虫にも五分の魂というが、魂の代わりに強欲と肥大したプライドと被害者意識の傷痕は誰をも簡単に暴走させる。悪魔も幽霊も怪物も出てこないが、ほとんどホラー小説を読むような人の業のおぞましさに心を抉られた。不愉快な傑作とは本書のためにある言葉かも。2025/09/04
starbro
308
辻堂 ゆめは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、著者デビュー10周年記念作品、現代のニュースになる社会問題の裏側をテーマにしたイヤミス連作短編集でした。オススメは、「夕焼け空と三輪車」&「まだ見ぬ海と青い山」です。 https://www.tokuma.jp/book/b666806.html2025/10/11
bunmei
217
毎日の様にメディアで報道される悲惨な事件。それらの真相追及の為に、メディアは遺族や関係者の立場も無視して、取材攻勢をかける。そして昨今では、SNSを介した無責任な誹謗・中傷の声が溢れている。しかし、そうした事件に至るまでには、決して世間には公表されない、当事者の已むに已まれぬ状況や環境がある。本作は「犯人をそこまで追い詰めた理由は何か?事前に防ぐ術や時はあったはず」といった事件の背景を掘り下げた、5編からなる短編集。どの事件の根底にも、人としての弱さや甘え、傲慢、理不尽さから招く『業』が絡み合っている。 2025/10/07
hirokun
209
★5 何度も耳にしている様なニュースの背後に隠された真実に存在する人間の業・情・優しさなどを小説という媒体を使って丁寧に表現した作品。五つの短編から成り立っているのだが、ストーリーに引っ張られ読み進めるのを急がされた。よく見かけるニュースからこの様な物語りを創作する 辻堂さんの筆力に感服すると同時に、日常見かける事実の裏側に存在する真実を常に意識することをこの作品から教えられた。天晴れ!! 2025/09/08
いつでも母さん
177
「今日未明・・」何度も耳にして(目にして)事件・事故ってこんなに多かった?って60年以上生きて今感じることの一つだ。何度聞いてもざわざわしてしまう響き―辻堂さんの新作はどれも事件記事から始まる5話の短編。字面だけでは見えない、事件の裏側にどんより苦い思いだ。一人の人間の心の内なんてたとえ家族でも、どれだけ付き合ったとしても掴み切れないのだ。後味の悪い犯罪ばかりなのに読まされて、辻堂さんお見事。溜息しか出ない読後感だった。そしてプロローグとエピローグは私自身を映していた。はぁ。2025/09/05
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