内容説明
ニッポン放送から独立した「倉本聰」は、過剰なエネルギーでテレビ界・映画界に乗り込んだ。大河ドラマ「勝海舟」に端を発したNHKとのトラブル、石原裕次郎さんからの最後の依頼、田中絹代さんの切ない葬儀、高倉健さんと弾丸ニューヨーク旅行計画、富良野移住と「北の国から」の誕生、先に逝ってしまった盟友たち……。痛快無比な自伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カノープス
4
テレビドラマの黄金時代を築いた彼の反骨精神と様々な人々との交流を軸に描かれる倉本聰の後半生。人間ドラマとしての本書の大きな魅力は、倉本と昭和の名優たちとの交流にある。特に田中絹代の孤独な晩年と葬儀での「賽銭」のエピソードは倉本の筆致によって切なくも感動的に描かれ、昭和の大女優の業績と悲哀を象徴している。これは後年の『やすらぎの郷』誕生につながり、テレビ草創期を支えた同士への敬意とそれらを軽んじる風潮への怒り、成熟を拒否するかのようなテレビ界への批判になっている。言い残したくない…そんな想いが伝わる自伝だ。2025/08/11