内容説明
長年ひきこもっていた19歳の僚太と44歳の大知。双方の家族が縋ったのは、新宿にある自立支援センター。強引に自宅から引き出された二人は、ほかの三人とともに、元警察官が営む熊本の研修施設で囚人のような生活を強いられる。施設長は巨体の大女だ。悪魔のような彼女に監視され、辛い日々が続く中、監獄のような扱いに抗い五人は施設長を殺めてしまう。必死にもがき、社会に怯えるように生きてきた彼らの終わりが始まる――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
217
引きこもりを抱える家族の苦悩は深いだろうが、救いを求める気持ちに付け込んで金をむしり取るブラック支援業者は亡者の衣服をはぎ取る奪衣婆か。そんな業者に強制収容所で奴隷扱いされてきた男女5人が反乱を起こし、弱者を食い物にする連中に戦いを挑むドラマだが正直カタルシスに乏しい。人生を投げていた彼らの愚かさが、周囲にどれだけ迷惑をかけていたか最後まで理解していない。業者の関係者を殺したり監禁する場面でも、痛い目に遭った経験がないから引きこもり続けた実態を映している。2つの悪が自分たちがマシだと言い争っているようだ。2025/09/16
hiace9000
168
疾走感あふれる社会派エンタメ! 染井さんらしい社会の陰に隠れた人間への目のつけどころ、そしてあえて意外な人物に視点を焦点化した構成。どうする?どうなる?の斜め上を行く展開に本来持つべき罪悪感すら消し飛ぶ罪深さ…。そう来たか!の驚きと喜びで一気読みは、もはや染井流お約束か。引きこもる側の自己嫌悪感、引きこもらせてしまった側の自己否定感、立ち直らせる側の歪んだ自己有用感と優越感。それらを一気に解決する正解など、おそらくない。一つ言えることがあるならば、「人を変えることができるのは、人しかいない」なのだろう。2025/10/23
いつでも母さん
157
「枠にはめようとする存在があるから。」あぁ、思い当たることはある。紙一重でならなかっただけ・・染井さんの新作はひきこもりを題材に、強引に引き出された男女5人と、引き出したブラック支援団体の攻防を、エンタメ感満載で一気に読んだ。面白かったと言えば語弊があるかもしれないが、母親の気持ちも苦しいほど伝わって切なかった。映像化の予感有り(笑)あれから10年後のエピローグが染井さんっぽいと感じた(当方比)2025/09/18
タイ子
129
ここに数年間ひきこもっている2人の男がいる。ある日、突然彼らの元に数人の人間たちがやってきて強引に家から連れ出される。もちろん、家族は承知の上だから拉致ではない。自立支援センターなる会社が請け負った脱ひきこもり作戦は全部で5人の男女がいた。ここで始まる地獄の生活。ハラスメントなんて関係ない、暴力と暴言による支配力。拷問のような毎日がある日突然終わり、新しい生活が始まる。この展開があるから面白い。地獄を見た者は普通の生活さえ天国。秘密を共有して生まれる信頼感は頼りなくも心強い。何だ、読後のこの爽やか感は。2025/10/09
hirokun
120
★3 今回の染井さんの作品は、引きこもりとその回復を支援するためのブラック企業を題材にしたエンタメ小説。内容的に社会派小説という程の深掘りはなく、どちらかと言うと少し軽さを感じさせる。作品は兎も角、8050問題として話題になっている様に引きこもりはなぜ発生し、なかなか解決に向かわないのか?また日本は引きこもりの件数が多いとの事だが、日本の何がそのような状況を引き起こしているのか?根本から解決していくためには、その原因を明確にする必要があるが、案件ごとに要因が違っているのかもしれないし、本当に困難な課題だ。2025/10/07
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