内容説明
奥多摩湖の秘史を綴るノンフィクション小説。
「一日にたった五時間しか日が当らない。僕はこの村に日蔭の村という名をつけているんです。大木の日蔭にある草が枯れて行くように小河内は発展する東京の犠牲になって枯れて行くのです。都会の日蔭になってしまうと村はもう駄目なんです」
昭和初頭、爆発的に増加する東京の水需要にこたえるべく、奥多摩の地にダムが計画された。住民たちは大局的見地に立って、立ち退きを了承したが、水没するエリアが二転三転し、そのうちに神奈川県から水利権をめぐる横やりもあって、なかなか話が進まない。
すぐに支払われるはずだった立退料も宙に浮き、養蚕などの生業を中断してしまっていた住民たちは、今日食べるものにも事欠く事態に陥っていた……。
観光名所として人気の奥多摩湖だが、その裏で当事者たちが味わったやりきれない思いを丁寧につづったノンフィクション小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroshi Kataoka
8
奥多摩の小河内ダム建設に伴う立ち退き騒動の中、村の人々が狂わされていく様子が生々しかった。移転金への期待から、麦植えや養蚕を放り出し、高利貸しの餌食となって牛や土地を失っていく過程は人の弱さを感じた。 そんな村全体が浮足立つ中で、村長や竜三が「何事もなかったかのように普段の生活」を続けようとする姿に胸を撫でおろした。最後に竜三は東京へ出ることを選んだが、その先の人生で幸せを掴めたのかどうか?2026/02/11
RAIDENGAWARA
2
山間の村がダムに沈むことになり、村民は補償金をもらって村を離れるはずが、政治家とカネと不動産と高利貸しに村民たちは先延ばしにされて翻弄されて困窮していく。今でこそダム建設に伴う移転は、事業者と土地の住人の双方が妥協して合意して工事が進展するのでしょうけど、当時はこんな強引な手段が取られていたとは、あまりにも悲しすぎますね。村長さんも村民と自治体との板挟みにあって大変な苦労だったでしょう。最後はハッピーエンドになるだろうと期待して読み進めましたが、現実はもっと冷たいものでしたね。2026/02/15




