内容説明
わたしは、やっと、自分がなにを作っていたのか知った。
満洲国・新京。
そこで彼女たちに何があったのか。
戦後80年
『きみはいい子』『世界の果てのこどもたち』『天までのぼれ』の著者がおくる、語り継ぐべき物語。
『世界の果てのこどもたち』には書かれなかった、もう一つの真実。
わたしは気づけなかった。
気づけなかったことはたくさんあった。
この物語の中で繰り返されるこの言葉が、いまを生きる、私に迫る。(略)
私はこの作品が『伝言』と題されたことの重大さを、ずっと考え続けている。
――小林エリカ(解説より)
満洲国・新京で暮らす、ひろみ。
聖戦とよばれた戦に勝つため、工場に集められた彼女たちは、鉄の機械とのり、刷毛を使って畳ほどの大きさの「紙」を作り続ける。
それが何なのか、考えもせずに。
五族協和、尽忠報国――信じていた国でひろみたちはどう生きたのか。
これはわたしたちが忘れてはならない物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
59
パレスチナ人の土地に暴力によってイスラエルが建国した。 それより前、大日本帝国は中国東北部に満州国を建国した。テロへの反撃という圧倒的な攻撃でパレスチナ人を根絶やしにしユダヤ100%の土地へ完全掌握したいようだ。それより前、日本は、劣等民族が跋扈する不毛の大陸は一等民族日本人が統治しなくてはならないと決め多くの日本人を入植させた。他のアジア人を見下し、差別し、無差別爆撃し、細菌兵器を開発し実戦で使用した。そして軍は民間人を見捨てソビエト侵攻直前に本土に逃げた。残された日本人がどうなったのか。後世への伝言。2025/09/16
ユキノ
2
友人に紹介してもらった。 満州についての小説を読むのは、そういえば初めてだったし、開拓団にまつわるルポばかり読んでいたから、満州でも有名な女学校に通っていた「ひろみ」のような人たちがどう生きたか、考えを巡らせたこともなかった。 日本が敗戦したとき、真っ先に軍の関係者が日本に帰り、満鉄の関係者が帰り、開拓団は棄てられた。 戦争の悲惨さを、戦争は、さも平等であるかのように語ることのおぞましさ。2025/09/15