内容説明
十七歳の翠は浅草生まれ。私娼窟の玉の井で育ち、流れ流れて京城(現在のソウル)に来た。養父の口利きで、国語教師の家に世話になりながら女学校に通うのだ。下宿先には同い年の朝鮮人のお手伝い、ハナがいた。翠がなかなか彼女と距離が縮められずにいたところに、ハナの弟が行方不明になるというできごとが起こる。その日のうちに弟は無事に見つかるが、そんなことから翠とハナの間の日本人/朝鮮人の垣根が開いていく。そして翠には京城を訪れるひそかな理由があった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
171
第47回吉川英治文学新人賞候補作と言うことで読みました。 青波 杏、初読です。本書は、1936年、日本統治下の朝鮮、京城を舞台にしたシスターフッド青春譚の佳作でした。 果たして、京城に花は咲いていたんでしょうか❓ https://www.kodansha.co.jp/book/products/00004128452026/02/16
モルク
99
日本統治下の朝鮮の京城。日本から「かりそめのお嬢様」として来て女学校に通う翠と、翠の下宿先で子守として働く朝鮮の少女ハナ。友達になりたいと願う翠とそっけないハナ。戦争に突き進んでいく世相の中で次第に近づく。当時の朝鮮人への差別、関東大震災直後の朝鮮人の虐殺…苦しい描写もあるが、時代の波に流されながらも自分らしく生きようとする二人。果たして再会は果たせたのか。 私の亡父は子供の頃に朝鮮からの引き上げ者。いつか暮らしていた南部の町順天に行きたいと言っていた父の願いを叶えてあげられなかったことが悔やまれる。2025/12/05
ゆみねこ
73
1936年、日本統治下の京城(ソウル)で出会った2人の少女。翠は東京下町の娼婦街で育ち、かりそめのお嬢さまとして念願の女学生に。日本人家庭の下宿には同い年の子守りの朝鮮人少女ハナがいた。無口で言葉を理解しないと思えたハナが日本語の本を読んでいた。友だちになりたい翠と頑なに拒むハナ。やがて2人の気持ちが通じ合い2人をつなぐ数奇な運命が明らかに。関東大震災、朝鮮人差別、心に深く留めておかねばと思った。ラストは少し明るい気持ちでよかった。2025/09/21
fwhd8325
70
この友情の関係性はどうあれ、とても美しくすてきな物語でした。なんと言えばいいか、この世界に誰も触れてはいけないような、聖域のようなものを感じました。古い時代の話なのに、ついそこまで来ている今の時代のようにも感じられる。そんなことが何度も起きてはいけないのだ。2026/02/15
天の川
58
1937年の京城に翠が来たのは箔をつけるため。卒業後は日本で妾になる将来が待つ仮初のお嬢様だ。翠の預かり先の子守の朝鮮人の少女ハナとの関係は少し『台湾漫遊鉄道の二人』を思い起こさせる。統治する側、される側…でも心は繋がってゆく。当時の朝鮮の厳しい植民地統治ばかりではなく、彼女達の人生に深く影を落としていたのは関東大震災と治安維持法だった。特高警察に目をつけられていたのは預かり先の重先生だけではなかった。差別と偏見と思想統制。翠は長崎、ハナは平壌に。その行先にドキリとしたが、台湾での再会に心が少し和んだ。→2026/02/28




