内容説明
現在も読者に、そして後進の書き手に多大な影響を与え続ける作家・田辺聖子。彼女の少女時代は、戦争の時代だった。女学校で先輩に憧れ、物語の世界に遊び、空想を膨らませ創作する、その生活に忍び寄る戦争の影。自らの作家としての原点となる日々と反戦の思いをみずみずしく描く傑作エッセイを復刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ズー
20
非常に学があり、ユーモアのある少女が軍国主義であることに読んでて最初ギョッとするのだが、時代によって常識や正義が変わり、その時はそう思わされることが当たり前であったと気付かされる。結局終戦後に彼女は悪夢から目覚める。何も信じられなくなる。もっと早く降伏すればよかったのに、というかそもそも戦争なんてしなければ良かったのに。戦争のリアルと田辺さんの文学好き食いしん坊、好奇心旺盛などなどのエピソードの面白さ。戦争ものなのに読みやすく、しかし重要なことはしっかり伝わってくる素晴らしい作品。2025/10/21
らて
4
多感な時期を戦時下で過ごす主人公は軍国主義の女の子。その一方、中原淳一の描く華やかな少女にも夢中だったけれど お国のために自分を犠牲にすることを良しとし、日本の躍進を願い、物語を作り続ける姿やヒトラーを敬愛する様子に胸がギュッとなる。日本が降伏し、価値観が真逆になった時、もう世間ではなく自分の考えを持とうと考え始める。 この時代に生きているからこそ戦争は愚かだと、人間ならば言葉を使え!と言えるが、私も同じ時代に生まれたら、軍国主義になったのだろうか? 自分は本当に恵まれた時代に生まれたのだと改めておもう。2026/01/08
なぽり
3
降伏する宣言を聞いたときに、あの時代の人々の心に生まれたのはどんな感情だったろう。 安堵か、怒りか、喪失か。言葉では言い表せない感情だったに違いないけれど、それでも言葉にして伝えてくれる人たちがいるから、私たちは繋がれるんだろうね。 私からしたら戦争は過去のことだし実感もあまり湧かないけれど、これからの責任は私たちにあるってことを意識しておかないとだな。2025/09/22
Genzoh Minamishima
1
戦争ものはいくつも読んできたが、戦時中の日常を描いたものは読んでない。そもそも絶対数の少ない分野なのかもしれない。地域によって違うのかもしれないが、思いの外呑気な日常に思えた。それよりも、筆者の少女時代に書いた小説の完成度の高いこと。青臭さはあるにしろ感心して止まない。ただ、本編を読んでいるのか本書の中の『小説』を読んでいるのか、読み始めの時は曖昧になってしまった。2025/09/01
茶子
0
軍国少女だった頃の田辺さんの戦中から戦後にかけてのエッセイ。軍国少女の田辺さんはいつも揺れている。天皇のために死ぬ覚悟に胸をときめかせながら、同級生とのおしゃべりを楽しみ、物語や詩歌を創ることに力を注いでいる。戦局が悪くなって自分の考えの根底を揺らぐ出来事が増えていく。敗戦後に国のために死にたい欲望やっと自分の心からのものではないことに気づく。いつの時代の女の子も矛盾を抱えていること、苦境の時代にも文学が心を枯らさずにしてくれる、当たり前なのかもしれないけど、その事実に心がほっこりしました。2026/06/11
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