内容説明
「いらっしゃいませ。喫茶ガクブチへようこそ!」
東京・高円寺の街角――〈あなたの思い出買い取ります〉と書かれたド派手な看板と、元気な掛け声に吸い寄せられるように入ったカフェは、壁が大小様々な額で覆われていた。
中には靴紐や映画の半券、玩具など“誰かの思い出の品”らしきもの……?
そこは、父親の跡を継いだ美咲兄妹が切り盛りする額縁店。寂れた店を復活させようと、妹の真日留は一階をカフェに大改造。兄の伸也はお客さんから持ち込まれた”思い出の品“を額装。額は客が大切に持ち帰ることもあれば、カフェの壁に飾られ、別の誰かが買っていくこともある。
店を訪れるのは、〈かつて世界中を旅し、いまは親の介護に明け暮れる多喜子〉〈カメラが趣味だった夫の遺言で、個展を開こうとしている郁恵〉〈無職の夫へのイライラが止らない梨々花〉〈大切なUFOの玩具を手にした、結婚を控える一直〉〈隣りの”おじいちゃん”の絵を持ってきた中学生の蒼空〉……。
生まれ変わった思い出が、傷ついた心と体を癒し、いつしか新しい出会いに繋がっていく。
『人生写真館の奇跡』『天国からの宅配便』著者が贈る、とっておきのハートウォーミング・ストーリー。文庫書き下ろし。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
153
兄の伸也、妹の真日留の兄妹で営む“喫茶ガクブチ”。カフェと思い出の品を買い取り額装できる額縁屋の連作短編集。良い思い出、嫌な思い出、人それぞれいろいろな思い出があるけれど、額装することで単なる思い出が、より新しい思い出に生まれ変わるのかもしれない。そして、見つめ直す時間と機会を与えてくれるのかもしれないね。老若男女が、いたって普通の思い出の品を店に持ち込む話ではあるが、売りに来た人達が再生していく姿は、温かくもあり優しくもあり、心地良い読後感を与えてくれた。 2025/09/03
Karl Heintz Schneider
47
第二話「最初で最後の写真展」が良かった。早坂郁恵は喫茶ガクブチに20枚の写真を持ち込む。亡くなった夫の遺言は自分の撮った写真の個展を開いてほしいというもの。出展する写真は全て生前既に夫に指定されていた。ところがどの写真も素人目には下手なものばかり。そんな郁恵の不安をよそに個展は大盛況。特に夫とは年代も違う若い人が多く目立った。彼らから夫は生前SNSで写真の他にもカメラやレンズのことを多く投稿していた。家では無趣味で無口な夫だと思っていたのに全く知らなかった郁恵は驚く。2025/10/10
たるき( ´ ▽ ` )ノ
35
額縁をあまり意識したことなかったな。家にある写真や思い出の品々も、このお店で額装してもらったらかけがえのない一品になるんだろうね♪喫茶店のメニューが独特で面白い。UFOの額縁がどんなものなのか、実際に見てみたくなった。2026/01/03
よっち
31
父親の跡を継いだ美咲兄妹が切り盛りする額縁店。生まれ変わった思い出が傷ついた心と体を癒し、いつしか新しい出会いに繋がっていく連作短編集。寂れた額縁店を復活させるべくカフェに大改造した妹の真日留と、持ち込まれた思い出の品を額装する兄の伸也。店を訪れる今は親の介護に明け暮れる女性や、夫の遺言で個展を開こうとしている女性、大切なUFOの玩具を手にした結婚を控える男性、隣りのおじいちゃんの絵を持ってきた中学生たちを相手に、兄妹が真摯に寄り添って、思い出を大切にする意味を改めて考えさせてくれる心に沁みる1冊でした。2025/09/03
mayu
30
あー良かった。柊サナカさんの描く世界が好きだなぁ。大人しい兄と明るい妹が父の跡を継ぎ一階をカフェに二階を額装店として二人で営業している。思い出の品を額装して買い取ってもらう為に訪れるお客さんは介護や子育てで日常に余裕がない方や無き夫の個展の相談、宝物を手放す人、おじいちゃんの絵を持ち込む少年など様々。とにかく美咲兄妹が真摯に話を聞いて温かさで包み込み、素晴らしい額装で心を動かす。その相手を想う思いやりに涙が溢れる。特に「最初で最後の写真展」「夜歩く息子」が良かったなぁ。続編を是非お願いしたい一冊。2025/08/16




