内容説明
言葉には、世界を変える力がある。
黒人として、父として、作家として――。
書くことで世界と闘い、生きのびてきたタナハシ・コーツが
暴力と希望のはざまで、「なぜ書くのか」を問いつづける魂の記録。
音とリズムにとり憑かれた少年が、
言葉に導かれ、書くことで世界とつながっていく。
奴隷制の記憶が残るアメリカ南部、
植民地支配の影が今も横たわるセネガル、
分断の続くパレスチナ。
そこに生きる人びとの声に耳を傾けながら、
タナハシ・コーツは「書くこと」の力と責任を深く問う。
世界の不条理に言葉で立ち向かうすべての書き手への渾身のメッセージ。
目次
第1章 ジャーナリズムは贅沢品ではない
第2章 ファラオについて──セネガルを歩く
第3章 燃える十字架を掲げて──サウス・カロライナ州を歩く
第4章 巨大な夢──パレスチナを歩く
訳者による参考文献
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
74
黒人ライターの作者が「なぜ、書くのか」を問う随想。書くことは「世界に境界線を引く」ことだと作者は言う。それには基準が必要で、彼は自ら黒人貿易の出発点セネガルなど「森」を歩きその「土の色」等を見た体験を語りながら、自分がどのように「悪党どもの基準」、野蛮人と西洋といった略奪を正当化する彼らの物語を検証し、世界を「明確化」していったか綴ってゆきます。最後は、そうして自分の枠組みを形成した人々が抑圧のシステムに反対する「新たな物語」の語り手になってほしいという思いが溢れて、豊かで強く温かいものが胸に残りました。2026/02/12
ヘラジカ
52
『世界と僕のあいだに』と小説『ウォーターダンサー』以来のタナハシ・コーツ。簡単に言ってしまえば人種問題や植民地主義等に関する時事問題、三つの紛争の場を巡るエッセイ集なのだが、この書に書かれているメッセージ(特に”書く者”へ向けて)の重さは尋常ではない。ここまで深く広い観察と洞察を、広範な一般の読者に向けて明快かつ鋭敏に綴ることが出来る作家(またはジャーナリスト)は滅多にいないだろう。やはりパレスチナを扱った章は特に凄かった。「蒙が啓かれる」と言っても良いような経験。必読の書である。2025/07/07
Willie the Wildcat
48
事実vs.真実。[(受・発信者)x(主・客観性)x媒体・・・]と、永遠に続く感のある多次元方程式。意識・無意識のBiasで、見える風景の差異に拍車。「絶対的な真実」の件が、本質を表している気がする。論理的帰結であると同時に、Chicken & Eggの世界。国内外で自身のルーツ、比較検討のための国外の他のルーツの検証。根源に関わる自身の振り返りを通した自省が〆。故の原題。真摯な姿勢に敬意も、大変僭越ですが、Welcome to the real world!2026/03/15
まこ
7
書くという行為を通じて、自分の考えを整理していく。考えをまとめると痛みを伴い、読者にもそれが伝わる。時には自分と違う視点の相手にも寄り添って理解しながら、納得できないことに納得できないとハッキリいう2026/02/19
naff1968
6
先日のサッカーの代表戦で、国歌を眼を潤ませながら歌う監督を見て、急速に応援する気を失ったのを思い出していました。“国家“というフィクションを支えるために生み出される大文字の“物語“の数々、そこで失われる命なんぞには誰も目もくれない。著者とともに、読み、考える。“物語“から生まれる感情に押し流されないように。2025/11/19
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