内容説明
陰湿、粗暴、狂信的……と語られてきた大日本帝国陸軍。
しかし実際には、建軍当初から、国際的視野を持つ開明的な将校などは多く存在していた。一九四五年の解体までの七十余年で、何が変化したのか――。
本書は、日露戦争勝利の栄光、大正デモクラシーと軍縮、激しい派閥抗争、急速な政治化の果ての破滅まで、軍と社会が影響を与え合った軌跡を描く。
陸軍という組織を通し、日本の政軍関係を照らす、もう一つの近現代史。
目次
はしがき
第1章 栄光からの転落
第2章 第一次世界大戦の衝撃
第3章 ポスト大戦型陸軍への挑戦
第4章 「大正陸軍」の隘路
第5章 「昭和陸軍」への変貌
第6章 陸軍派閥抗争
第7章 政治干渉の時代
第8章 日中戦争から対米開戦へ
終 章 歴史と誤り
あとがき
主要参考文献
関連年表
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
65
中堅学者によるコンパクトな日本の陸軍史。過去の著作などからも分かるように、いわゆる筒井清忠一派で、比較的保守派の論を下敷きにしており、そういう意味でよく言えば抑制された、軍を一方的に悪者にしていない論調。時々の軍の論理でその時点の判断を考える姿勢を持っている。その中で統帥権の独立がどのように機能したかを重視している。大正期に民衆が軍を「職業差別」のように蔑視したことが、後の軍の派閥争いにもつながるとか、「満洲派」石原莞爾という位置づけなど、興味深い視点もあり、まとまりもよいので陸軍を通観するには悪くない。2025/08/22
kk
25
図書館本。軍隊社会学的アプローチも加味しつつ、昭和陸軍失敗の背景に迫る。大正期における将校達の強烈なルサンチマンと深刻な国防不安とが、政軍協調路線の挫折、社会・経済状況、そして国際環境のトレンドなどの中で国政革新への執念へと変容。独善的な状況認識と相まって袋小路に迷い込み、ついに未曾有の破綻に至る有様を分かりやすく提示。様々な事象・論点の抽出・提示、背景や意味合いの分析など、読んでいて一々納得。また、例えば朝鮮軍越境問題の処理方策への評価など、単なる後知恵に堕さず、同時代的観点を強調しているのもナイス。2025/11/06
Hiroshi
12
日本陸軍が日露戦争後に藻掻き苦しみ対米戦争に踏み込んでいくのを見ていく本。著者は「陸軍は国防や陸軍自身に関する不安や焦燥感を克服しようと藻掻き苦しんだ果てに、過誤に過誤を重ね、最後は国家と面子の為歴史の隘路に迷い込んでいった」と書く。陸軍階級表や陸軍教育制度図と初学者への配慮がある。統帥権(軍隊の作戦用兵は天皇に直結し、内閣は関与できない)については軍部が政治から独立しているが、政治も軍から独立しており、軍事政権を樹立することが不可能な制度。その為軍部は陸軍大臣を通しての政治への関与をする等苦心している。2025/08/06
まんぼう
11
ざっくりと言うと、反戦・民主化運動などの思想の”敵”として軍や軍人が罵声と嘲笑の的になった大正デモクラシー期、軍縮や近代化を行うことで軍は国家国民に受け入れられようと努力するも冷淡な対応、報われなさに失望した軍はダークサイドへ…と。軍と政府の国際的危機感と政治に対する意識の違いや、政治家や裕福エリート層対、軍人とその下に徴兵される貧困農民層との間の乖離と無理解、また、当時の世界情勢の国家間の意識の違いや温度差、そういった諸々が絡まり合って引き起こした負のスパイラルの結果の惨劇であった。2025/12/31
Tomozuki Kibe
11
大正デモクラシーを学んだ陸軍がなぜ暴走していったか。司馬遼が「日露の勝利の驕慢」で済ましていたことを280pかけて分析。元ネタに中公「戦前日本のポピュリズム」が。巻末にウクライナ戦争のプーチンの立場云々とあるが、陸軍が政治へ口だせない葛藤も考察。なにしろ現役軍人には参政権がない。陸軍の政治への発言方法は「帷幄上奏」と「軍務大臣現役」しかない(逆に予備役は政党に入れる)。最も恐れられたのは天皇から「政治」と「軍事」の両権を奪う「幕府」の登場で、政党政治の軍への関与もこれもまた「幕府」であった、というは卓見。2025/11/16




