内容説明
帝国崩壊後、地方の現場は「他者」を分かつ境界をどのように立ち上げてきたのか。
旧植民地出身者の外国人登録、大村収容所での釈放問題、「密航者」への地域のまなざしの三点を軸に、制度と現場の乖離に着目しつつ、戦後日本の移動管理の実態を考察する。
目次
序章
第一章 「境界」をつくる――植民地以後の人の移動とその管理
1 外国人登録制度の形成期における身元証明と移動の管理
2 一九五〇年代初頭における外国人登録事務の現場
第二章 「境界」の現場――地域における外国人登録事務の展開
1 「外国人登録事務協議会」の発足
2 外国人登録における地域の独自性
3 成績優良職員の表彰
第三章 「境界」からの排除――朝鮮戦争前後の「密航」防止の取り組み
1 戦後期の出入国管理網と「密航」
2 一九五〇年代初頭の沿岸警備をめぐる治安実践
第四章 収容と送還のはざま――大村収容所の釈放問題を中心に
1 対日講和条約発効後の在留権の再定位
2 大村収容所の釈放事業と保護団体
3 一九五〇年代における日韓会談中断期の人の移動問題
第五章 「境界」へのまなざし――戦後長崎からみた大村収容所
1 戦後長崎と大村収容所
2 児童による大村収容所「慰問」の記録
3 収容所への視線――教室の体験から映画『日本の子どもたち』へ
終章
参考文献
註
あとがき
初出一覧
人名索引
事項索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
102
どんな法律や制度が作られても、現場で運用するのは市町村の担当職員だ。政治が求めるものを現実に当てはめるため、上に政策あれば下に対策ありとなる。一夜で外国人とされた朝鮮半島出身者をどう扱うか、未曾有の事態に対処せねばならない末端の苦労は想像に余りある。外国人登録実施で他自治体と協力体制を築き、密航防止のため防犯団体を結成し、大村収容所が満杯になると保釈者の保護団体を設けるなど、関係した市民ともども対策に奔走していたのだ。こんな状況の上に成立した日本の出入国管理システムが、今なお矛盾だらけな理由が見えてくる。2023/07/08
takao
2
ふむ2024/09/25
t0t0165
1
敗戦後の日本が直面した人的管理の問題の最前線で起きていたこととは。制度設計、現場の対応、現地の人々、それぞれが改めて「他者」を設定し、遭遇する様子が見えてくる。強固にも思える境界が持つ矛盾や揺らぎと共に、その矛盾や揺らぎが剥ぎ取れる様子が見てとれる。2023/08/08
ふく
1
最寄り図書館の新刊コーナーで。戦後処理から現在の地政学的イメージで…読み進めて気付くと朝鮮半島関連ばかり??あとがきを読んで納得。講和条約の具体的影響とか、朝鮮戦争で密航から白村江の渡来人を連想したり…なるほどと思い当たることも。 巻末書籍紹介から、入管収容施設の収容可否に司法は関与しない…等。読みたい本が増えた2023/07/04
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