内容説明
日本では毎年2万人、世界では80万人近くが自殺する。死因としては戦争や殺人より多く、WHOが警告する世界的公衆衛生問題だ。安楽死を選択できる国が増える一方で、自殺者の約85~95%には精神疾患があるとも言われ、自ら死を選ぶことの意味が改めて問われている――。〈自殺ゼロ〉政策を掲げるスウェーデンで、自殺研究の第一人者として知られる精神科医が、文化、宗教、歴史など多方面から徹底探求する〈生の価値〉。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
20
人が自分を殺す自殺や安楽死について、その歴史と倫理的な問題、実際にそれを試み生還した人、残された家族など様々な観点から解説した一冊。すごく難しいテーマに真摯に取り組み、だからこそ結論めいたことは言えず、ただそれでも現場にいた人間として祈るように願うように、考え続けなくてはいけない、そんな著者の思いを感じた。最後のドロシー・パーカーの詩がとても良かった。2025/12/12
ta_chanko
20
自分の人生に対する自己決定権があるとするならば、その終わり方=死についても自己決定権が認められるのか? 実際、安楽死を認めている国や地域も存在するが、一般的には自殺は精神障害やうつなどの病気が原因であるとして、治療や予防の対象となる場合が多い。予防措置や治療・監察などによって自殺を減らすことはできるが、何の予兆もなく、突然自殺してしまう人もいる。自殺は残された遺族や関係者に深い傷跡を残す。一方で、安楽死を選んだ本人は最期の幸せな時間を過ごしたのち、家族に看取られながらこの世を去る。非常に難しい問題...2025/11/06
樽
9
安楽死、尊厳死も自殺の一部として考察されているので、無邪気に自殺はダメ、ゼッタイと言うのも悩ましい。希死念慮に悩まされたら、「助けてください」と周りの人に声をかける、っていう対策はわりと効果ありそう。2025/12/05
dokusyotyu24
4
自殺がテーマの本であるが、安楽死や延命治療の有無についての議論も多く、現代的であるなと思った。2025/11/08
優しい親子丼
4
人間は誕生の瞬間から「生きる」という根源的な責任を負わされる。この責任は、歳を重ねるごとに社会的な期待へと変容し、やがて他者に迷惑をかけず、我慢を強いられる成熟した人格が求められる。 こうした世界観では、自己の命を絶つ行為は許されざるものと見なされる。生を放棄することはできないという厳格な倫理観が、絶望的な苦痛をもたらす。とりわけ男性は、社会的な孤立の中でその苦悩を深めやすく、高い自殺率がその現実を物語っている。「生きることは絶対であり、死は許されない」この矛盾に満ちた生こそが、地獄にも等しい。2025/09/24




