内容説明
誰にも言っちゃ、だめだよ。ふたりだけの秘密……高校教師の桃井銀平は、教え子の久子と密かに愛し合うようになる。だが、二人の幸福は長く続かなかった――。湖畔で暮らしていた初恋の従姉、蛍狩りに訪れた少女など、銀平が思いを寄せた女性たちの面影や情景が、中世の連歌のように連想されていく。作家の中村真一郎が「戦後の日本小説の最も注目すべき見事な達成」と評した衝撃的問題作。(解説・中村真一郎、角田光代)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
118
ストーリーはあって、主人公は少女のあとをつける趣味のある銀平であり、登場人物もそれぞれにつながりがあり、物語は進んでいく。次々に人物の主観で見える世界が移り変わり、ただ中心となるのはみずうみの記憶である。それは幻想であり、実体験の記憶であり、瞳の中にあるイメージである。読み終えて印象に残るのは、蜘蛛の糸にかかった目白であり、鼠の死骸をくわえた飼い犬であり、ラストの子どものいる女のゴム長の中の足である。中村真一郎と角田光代の解説も素晴らしい。佐伯一麦氏が本書を川端康成のベストにあげていたので読んで良かった。2023/08/13
雪月花
53
タイトルの「みずうみ」から美しい物語を想像していたが、実は美しい女性を見るとあとをつけたくなる奇癖のある、今でいうストーカーのような男性の話だった。それでも時折、主人公の記憶の中に登場する湖が美しさと哀しさと不気味さをたたえる存在として、とても象徴的である。醜い足にコンプレックスを持ち続けて美しい女性に近づきたくなる銀平は、女性から見たら理解しがたい気持ち悪さがあるかもしれないが、読み進めるうちに、生い立ちなどもわかり、だんだん哀れになってきた。川端作品としては好悪の分かれる作品らしい。2023/07/13
ノブヲ
24
仄温かい辺りに立ち込める白い湯煙。そうした限られた状況は、作者である川端康成にとって、どうも魔界か夢の世界への導入を示す最初の合図、一種「暖簾」のような役割を果たしているのかもしれない。気持ちよさに軽くのぼせたような頭で、めくるめく想いをあらぬ方角へ馳せていると、いつしか現実と夢想とのリアリティや実感がそっくり入れ替わっている、といったような。銀平を中心にしつつも、特にこだわることなく蜜蜂が羽音を鳴らして花から花へと飛翔するような視点のザッピング、自由度の高さは、現代から見てもとても斬新に思えた。2026/06/01
新田新一
20
美少女を見かけると、後をつけてしまう病的な癖を持った男が主人公の物語。『山の音』のようなしみじみとした詩情がある川端康成の他の作品とは、異なった雰囲気があります。それでも私は面白く読めて、文豪の凄みを感じました。確かに銀平の嗜癖は褒められたものではありません。不気味とさえ言えます。でも、どんな人間でも、多かれ少なかれこんな後ろ暗いところを持っているはず。それをみずうみという美しい情景を象徴的に使いながら、描き出すところにこの作家の天才を感じます。あまりに面白かったので、他の作品も読み返すことにしました。2024/03/17
Janjelijohn
13
綺麗な少女を見かけると後をつけてしまう倒錯した青年の話。現実世界が桃色に見え、幼い頃の辛い記憶が突如として浮かんだり、目の前の少女に悪戯を企てたりするので、読む側ははらはらすると同時に暗い気持ちになった。劣等感を抱えるが故に、美しいものに憧れ、それを傷つけたり汚してしまいたいという気持ちはわからなくもないが、実際に物語として読むと吐き気を催すものだった。川端氏は何を伝えようとしたのかと思う。2023/10/14
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