内容説明
作家小川洋子氏による、おとなの工場見学エッセイ。あのベストセラー『科学の扉をノックする』の工場版ともいえる本です。精密な穴開け加工を行う工場、お菓子の製造過程を見せる施設、競技用ボートを手作業で作り上げる造船所、多人数用ベビーカーや介護用品を自社一貫生産する企業、ガラス管の加工を手掛ける工房、そして鉛筆の製造における工夫と精神を紹介。幼いころから変わらぬ小川さんの好奇心と工場愛がじわじわ心にしみて、今、日本のものづくりに携わる人々と、繊細で正確な数々の製品のこと、あなたもきっと、とても愛おしく思うようになるでしょう!
目次
細穴の奥は深い
お菓子と秘密。その魅惑的な世界
丘の上でボートを作る
手の体温を伝える
瞬間の想像力
身を削り奉仕する
あとがき
この本で訪れた工場
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hiace9000
128
著者小川さんが、幼い頃からの夢を叶えた工場見学記。なにより「ものづくり」への浮き立つような情熱・興奮と、豊かな感受性に詩的感覚を纏わせた圧巻の"随筆力"に完全魅了される。ものを作る機械に人の手と体温が加わることで生まれ得る、作り手の心を相手に届けたいという確かなる願い。AI全盛の現代にあって「人間の手による尊い『ものづくり』という仕事」の持つ価値がここにある―という再発見も。心に染み入るエッセイとは、まさにこれか。精緻で繊細な職人芸が生み出す創造性と未来の可能性を、一流文藝職人小川さんが瑞々しく綴る一冊。2025/06/19
けやき
39
大人の工場見学。前作の科学者にインタビューした「科学の扉をノックする」がよくて手に取る。お菓子や鉛筆など身近なものを作る工場の紹介に魅かれた。2025/06/10
バイクやろうpart2
39
小川洋子さん作品三作目です。不思議なタイトルと可愛いイラストに惹かれ手にしました。あの『博士の愛した数式』の作家さんにしては、変わった趣きを感じながら、特徴ある工場を優しく紹介されます。金属加工、お菓子、ボート、乳母車、ガラス加工、鉛筆、どの工場も尊敬の念に彩られた言葉で綴られます。小川洋子さんの言葉、本当に優しく暖かく、読んでいて気持ちが癒されます。まだまだ他の本も読んでみたい作家さんです。2025/05/31
エドワード
34
少女の頃の思い出を忘れない小川洋子さん。岡山の家のそばの町工場。高い塀の向こうの謎の建物。理科準備室は私も好きだったな。その好奇心が6つの工場見学になった。金属加工。お菓子。ボート。乳母車。ガラス管。鉛筆。グリコの工場で「チョコレート工場の秘密」を思い出すのも同感。グリコを除き、みな家族経営の小さな会社だ。機械化できない人の手の技が光る。マニュアルでは引き継げない、経験を重ねるしかない技術という言葉が印象的だ。保育園児の乗るかごのような車がサンポカーということを初めて知り、思わず頬が緩む。日本語は美しい。2025/06/10
まさ
28
小川洋子さんの工場レポ。意外に感じる組み合わせだけど、そこは小川洋子さんの視点があるからおもしろく読める。職人さんの業について、読んでいても美しさを感じるのだ。訪ねて追体験してみたくなります。2025/06/03