内容説明
第173回芥川賞候補作
英会話教師として日本で就職したブランドンは、アポロ11号の月面着陸計画の記録を教材に、熟年の生徒・カワムラとレッスンを続ける。
やがて、2人のあいだに不思議な交流が生まれていく。
日本に逃げたアメリカ人と、かつてアメリカに憧れた日本人。
2人の人生の軌道<トラジェクトリー>がすれ違う時、何かが起きる――
アメリカ出身の作家が端正な日本語で描く、新世代の「越境文学」
ニューオーリンズにフォークナーと小泉八雲の残影を見る珠玉の短編「汽水」併録
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
153
第173回芥川賞候補作第二弾(2/4)、グレゴリー・ケズナジャット、2作目です。少し軌道(トラジェクトリー)のずれた二人の群像劇、芥川賞受賞の軌道からは、少し離れた感じでした。候補作にて表題作よりも「汽水」がオススメです。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639201222025/08/10
ケンイチミズバ
63
講師の契約更新を悩みながら棚上げしている。ここが自分の居場所なのだろうか。生徒の男はリタイヤし行き場のないまま、目的なく通い続ける中高年。アメリカ人英会話スクール講師と男とも漂う者同士だ。そして認めたくない。男はしかし、結論を出す。もう来ない。ここじゃないと。スクールのコンセプトはグローバルな意識を持つ学生やサラリーマンや子供をグローバルな人材にと考える親がターゲットだった。地方都市でそれはかなわず、スクール自体がモラトリアムだ。著者お得意のこの寂寥感の描き方がうまいがそろそろ違うジャンルに期待したい。2025/08/12
えんちゃん
56
こちらも文學界6月号にて。芥川賞候補作品。こちらはさくさく読める。アメリカから名古屋に来た青年の日々の物語。母国に居心地の悪さを感じ日本にきた英会話教師・ブライトンと、日本メーカーを退職しアポロ計画が憧れだったおじさん生徒・カワムラ。ふたりの米国に対するズレ。もちろん埋まらない。そういうところに面白みを感じた。言語とは。母国とは。アイデンティティとは。淡々と語られる文章の中に著者のトラジェクトリー・軌跡を思う。2025/07/16
石橋陽子
18
英会話教室を舞台に、言語の在り方からそれに付随し自身のアイデンティティを考えていく哲学的な小説。言葉は自分を包み快適な環境を提供し続けている。そして言語が自己をつくる。昔は非日常的な憧れに導かれるまま英語を学んだが 、今はグローバル世界に参加するツールとなっている。言語の壁は、他者との境界を越える困難さを表出している。トラジェクトリーとは軌跡。目的が到達出来ようが出来まいが、それまでに至る人生の軌跡が大切だというメッセージが含まれているのだと思う。アメリカ人だが日本語で執筆を行う著者ならではの視点作品。2025/06/22
信兵衛
16
アメリカと日本の狭間にいる著者だからこそ、気づき、また描ける作品でしょう。その感覚が、鮮烈で魅力です。2025/08/14
-
- 電子書籍
- 拝啓…殺し屋さんと結婚しました【分冊版…
-
- 電子書籍
- FINAL FANTASY XIV: …
-
- 電子書籍
- 新人漫画家、風俗嬢になる[ばら売り] …
-
- 電子書籍
- Odds VS!(19) アクションコ…