内容説明
12歳の少女サマァが生きているのは、いずれわたしたちもそうなるのかもしれない世界。地球の表面からほとんどの生命が消えて、砂漠に飲みこまれた世界だ。人々はそこで遊牧の民となり、残った木々を狩り、生きるためにそれらを材木にして売っている。サマァも木々を狩るハンターになりたいが、それは部族の掟で男の仕事。諦めきれないサマァは密かに準備し、ある日、狩に出たハンターたちのあとを内緒でついていく。しかし、砂漠にはさまざまな顔がある。道に迷ったサマァは獣と遭遇、さらに強烈な砂嵐に巻き込まれ深い穴に落ちてしまう。そこでの衝撃的な出会いがサマァの人生観を変えていく。穴の底で食料が尽き、日に日に弱っていくサマァ。それでもサマァがつかんだ真実が、部族全体の運命を永遠に変えることになる。サマァの1人称によるサバイバルファンタジー。詩的な雰囲気とともに強く切ない意志が伝わってくる命と希望の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
158
自然の偉大さ、食物の大切さ、水源の尊さ、心の潤い。豊かさは今ここにあるから当たり前に感じるが、砂に覆われてしまった世界では無意味なものとなる。多種多様な生物も命を尽きてしまった。砂と風しかない夜に独り。囀りもせせらぎも聴こえない。人間は種一粒作りだすこともできないのに、失ったものを取り戻すこともできないまま忘れ去る。人間は不変ではない。行動し経験を積めば当然変化していくものである。長老の語り継ぐ世界は決して幻想ではない。音や色、光や影、動と静がこの実世界にあると気づいたとき、希望の双葉は芽生えるのだろう。2025/05/21
まる子
22
この国(場所)では男しかハンターになれない。しかしサマァはミュルファへ行く事を宣言したー。ここはかつて緑や木湖があった場所だけれど、今や砂漠。木は地下に潜ってしまうため酸素が不足する中、人々はなんとか食糧を得て生きる。未来のはずが…。ナウシカのような設定に感じた(ナウシカは未来を予測しているのかも?!)地球温暖化、環境問題を抱える現代に生きる私たちの、そう遠くない未来なのかも知れない。十年に一度のセレモニーで読まれる〈本〉とその先のサマァの未来はどうなっているか、読者に見届けてほしい。2025/06/30
レフ
2
フランスのSF絵本。つまらなかった。2025/06/14
かはほり
1
目次がなく章立てもないので不思議に思いながら読んでいたら、原作がそうなっていて著者の意向に従って訳者もそうしたことが「訳者あとがき」でわかった(切りの良いところで行間が空いているので、そこでいったん区切って読むことはできる)。砂漠が緑化していくラストが短すぎて少し物足りなかった。この本のテーマは、環境問題なんだろうけど、多雨で緑が多い日本では、今ひとつ遠い世界のお話だったけど、訳がかなり工夫がなされていると感じられ読みやすい。日本人による挿絵や装丁は、この物語に合っていて良い。2025/06/25
希咲(きさ)
1
素晴らしかった。 命の尊さや自然の豊かさを考える、希望と再生の物語。 時に苦しく、時に切なく… 途中で読むのをやめようかと思ったけど、この結末を見届けなくてはという使命感に駆られて読み切った。"ハンター"という言葉やあらすじからワクワクハラハラするファンタジーをイメージしてたけど、良い意味で裏切られたな。 2025/06/05