内容説明
社会主義下のアルバニア。粛清と困窮にあっても自由への期待に満ちた少女時代は、1990年、抗議行動の高まりで一変する。自由選挙と市場開放に続く構造改革、移民増加、ねずみ講破綻は、その後激しい暴動に発展する。ある世代の希望は別の世代の幻滅となり、家族の秘密が明らかになる。ふたつの世界を往還する20世紀の成長物語。
目次
I
1 スターリン
2 ほかのイピ
3 471─簡単な経歴
4 エンヴェルおじさんは永遠にわたしたちのもとを去った
5 コカ・コーラの缶
6 同志マムアゼル
7 日焼け止めクリームの匂い
8 ブリガティスタ
9 アフメトは学位を取った
10 歴史の終わり
II
11 グレーの靴下
12 アテネからの手紙
13 みんな出ていきたがっている
14 競争のゲーム
15 わたしはいつもナイフを持ち歩いていました
16 これもまた市民社会
17 クロコダイル
18 構造改革
19 泣くんじゃありません
20 ヨーロッパのほかの国のように
21 一九九七年
22 哲学者は世界を解釈してきただけだ、重要なのは世界を変えることである
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TATA
31
アルバニア国家の趨勢を見てきた著者による追憶記。私が中学生の時に「鎖国の国」と習った。国家全体がネズミ講で資産を失ったとニュースで見た。どんな国なんだと殆ど国交のない国への興味はずっと尽きることはなかった。6年前に旅行した、首都ティラナと世界遺産の街ベラット。ガイドの方にアルバニアの歴史を聞いた。英語を話せることが生きる道だったと。トルコ、イタリアに占領され、戦後共産主義国家となり中ソと仲違い。複雑すぎる歴史の一端がようやく理解できた。国の体制変更がいかに国民生活に混乱をもたらすか。考えさせられます。2025/06/21
ほなみ
5
アルバニアが社会主義から自由主義に変わる時、少女が見た世界を描いた小説。 最初はよくわからなく、正直つまらない印象であったが、最後の方はどっぷりハマってしまった。アルバニアは自由主義になった途端、ネズミ構が流行り、人口の3割が財産を失ったと言う国である。 そんな中で社会主義時代に幼少期を生きた主人公は、自由主義を忌み嫌うところも見られる。 側から見ると素晴らしいことが、個人目線で見るとわからなかったり、実際その中で育った人の感性や幸せが何か考えてしまう。 ポジションだなと改めて思う2025/05/27
イカカイガカ
3
とても興味深く、読んで良かったと思える一冊だった。社会主義化のアルバニアで生まれ育った著者。一人の少女から見た祖国の歴史と家族の物語。1990年に体制が転換、市場経済化と自由選挙が行われ、それまで信じていたものが否定される。1997年には経済破綻を契機に暴動へと発展。身近に接していた人々を含む多くの死傷者を出す内戦状態となる。その後、国外の大学へ入学し、学者の道へ。専攻はイマヌエル・カント、マルクス主義と批判理論。社会主義と資本主義、双方への批判的視点と、真の自由とは?との問いが印象的。2025/03/22
Go Extreme
3
アイデンティティ: 個人のアイデンティティ 家族 自己のアイデンティティ 家族の歴史 家族の絆 個人の喪失 親子関係 教育と社会主義: 教育 社会主義 学校の授業 自由と教育 思想の変化 宗教批判 科学と理性 自己の問い 戦争と社会変化: 戦争 社会変化 政治体制 抗議活動 自由の追求 政治的自由 自由と社会政治: 民主主義 政治の変化 スターリン像 自由の概念 政治体制の影響 過去の歴史 自由の重要性 宗教と社会: 宗教 社会主義国家 神の存在 思想改革 迷信 解放 希望と成長: 未来への希望 自己確立2025/03/13
かどの炭
2
1979年に社会主義国アルバニアで生まれた哲学者の著書の家族や友人、変貌する社会について書いた自伝。 巻頭の「人間はみずからの自由な意志で歴史をつくるわけではない。だが、それでもやはり歴史をつくる」ローザ・ルクセンブルク、 「(略)わたしたちは永遠に引き裂かれたままになる。わたしがわたしの話を書いたのは、説明し、和解し、格闘をつづけるためにほかならない。」という文章が全て。2025/04/03
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