内容説明
死霊、異常心理、怪物、狂信――
英国怪奇アンソロジーの定番作家、本邦初の短篇集。
古く平井呈一らに邦訳がなされ英国怪奇ものの一角をなすW・F・ハーヴィー。
鬼気迫る幽霊談、暗合と運命の交錯する奇譚から、精神の暗部を抉る不気味な物語まで、ときにブラック・ユーモアを漂わせて絶妙なアトモスフィアを醸しだす。
水木しげる漫画「むし暑い日」に翻案された「炎暑」、あるいは映画『五本指の野獣』の原作として後世のホラー映画に影響をもたらした「五本指のけだもの」等々、新訳が俟たれし異界への裂け目を顕わす作品をここに集成。
初訳3篇を含む新訳による珠玉のコレクション。
?初訳作品「ミス・アヴェナル」「追随者」「ピーター・レヴィシャム」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
65
何とも端整な怪奇小説集。冒頭のアンソロジーピースとしては外せない「炎暑」からもう本の中に惹きこまれる。不思議な出来事を二つ列挙しただけで、その後の惨劇を予感させる出来はもう名作としか呼びようがないなあ。吸血鬼や憑依といったダイレクトな怪奇小説も良いけど、個人的には「追随者」や「道具」といった何かが背後に隠れているような得体の知れなさを持つ作品が好き。表題作はどこかコミカルな面を持つ妙な一作。ブラックユーモアを持つそれは、どこかパイソンとかに通じるものを感じる。「炎暑」は暑い季節に是非読んでもらいたいなあ。2024/07/24
maja
24
W・F・ハーヴィの怪異譚9篇が収録された短編集。「炎暑」は既読。じんわりと怖さに染まる「炎暑」。傍観者でいたはずが実はもう身動きが取れないほど囚われていたという「ミス・コーリニアス」の2作品の捉えられない恐怖がよかった。表題作の「5本指のけだもの」はドゥーワップコーラスの白手袋のもったいぶった動きを何故だか思い浮かべてしまったものだからか可笑しくなってきた。特異な不気味な話なのであるけど。2025/06/06
くさてる
22
まさに古めかしい怪奇小説で、お好きな方にはたまらないという感じの短編集。「炎暑」と「五本指の毛だもの」は以前アンソロで読んだことがある。やはりこの二作が抜きんでていると思うけれど、最後の展開が思いも寄らぬ怖さがあった「ミス・コーリニアス」が好きで。。2024/10/28
sosking
13
短編集。創作時期は、100年も前の時代のもの。怪奇物が好きな方にはたまらないのでしょうね。個人的には、読みづらかった印象が拭えません。2024/12/26
竜王五代の人
12
代表作「炎暑」をはじめ、もやもやとした不穏な雰囲気を漂わせる怪奇作品集。その中で、最後に置かれた表題作は「オフビートなユーモア」と評されている。これこそ、水木しげるにコミカライズしてほしかったかも。2025/02/15