割れたグラス

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割れたグラス

  • ISBN:9784336076946

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内容説明

現代アフリカ文学の最前線を紹介する、新海外文学シリーズ《アフリカ文学の愉楽》創刊!

小社の海外文学路線を切り拓いた《世界幻想文学大系》、のちのブームを決定づけた《ラテンアメリカ文学叢書》の刊行開始から約半世紀。
これまで日本で語られることの少なかった20世紀後半から現代までの芳醇なアフリカ文学の世界を本格的に紹介すべく、そして遠く離れた日本の読者が抱くアフリカへの印象をより豊かなものとすべく、《アフリカ文学の愉楽》が刊行開始!

第1回配本は、現代アフリカ文学随一のヒップスター、コンゴ共和国出身のアラン・マバンクによる代表作!

コンゴ共和国の港湾都市ポワント=ノワールの下町にあるバーツケ払いお断り。
バーの主人《頑固なカタツムリ》からの依頼で、《割れたグラス》はバーとその常連客たちとの日々を思いのまま1冊のノートに書き留めていくことになる。
何枚ものオムツを穿いた《パンパース男》、フランスかぶれの寝取られ《印刷屋》、誰よりも長く放尿できると豪語する《蛇口女》など、いずれ劣らぬ酔客たちの奇怪な逸話が次々とノートに綴られていく。
やがて、《割れたグラス》は自身についても書きはじめるのだが……。

作家としてはじめてコレージュ・ド・フランスの招聘教授に着任、また国際ブッカー賞の選考委員を務めるなど、現代アフリカ文学の最重要作家のひとりとして活躍の場を世界的なものへと広げている、アラン・マバンクが放つ驚異の傑作がいまここに!
フランコフォニー五大陸賞をはじめ数々の文学賞を受賞、ルノドー賞最終候補作にして、英国ガーディアン紙が選ぶ「21世紀の100冊」にも選出された、酔いどれたちのめくるめく狂想曲!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

buchipanda3

93
「夢の中みたいな人生を生きているとしても、俺はまだ人生を夢みているんだ」。"ツケ払いお断り"っていう名の世界中どこにもないバーに出入りする酔客らとの人生語り。嘘か実か分からんけど奴らの話はクソみてえで哀しくて面白かった。パンパース男に蛇口女、この世界は酔っ払わねえと見てられねえ代物。文学の旅をしても元宗主国も肌の色も孤独もガチガチだ。でもその旅は皮肉であり未練で夢でもある。"割れたグラス"の底なしの酒、人生は酩酊。人生にツケはきかねえ。カンマを打つ間は人生が続く。ピリオドを打ったら、酔いが醒めたら天国か。2025/10/06

たま

89
コンゴの酒場で酔客の言動を他の客が書き留め、また自分を語る。ななめ読みだが(1)挫折しなかったのは、このコンゴの酔っ払い達のように、泥酔して文学を語る(と言うよりただ本の題名をひけらかす)人間を50年前の日本でたくさん見聞きしたことをしみじみ思い出したから。教育を受け〈先進国〉の文化に触れたとしても(2)、目の前の現実は国民所得がやっと1万ドル(1970年の日本、コンゴは未だそれ未満)、酔えば路地裏で小便。安酒で酔っぱらわなければやってられない悲しさである。私小説とか無頼派の好きな人にはお勧めかも(3)。2025/09/07

藤月はな(灯れ松明の火)

64
バー「ツケ払いお断り」に屯するのは人生の落伍者ばかり。ノート前半は下ネタと「男らしさ」に固執しつつもズレてしまう悲哀、宗主国からの蔑視から逃れられない燻った憤りと諦めが語られる。例を挙げると新興宗教の教祖に妻を寝取られた挙句、刑務所送りとなり、オムツが欠かせない体にさせられた<パンパース>、落ちていたマグナムサイズの避妊具からフランス人妻の不貞に気づいて狂った<印刷屋>などなど。だが、その中には数多くの文学作品の引用・投影もあるのでかなり、煙に巻かれます。一方、客観的語り手という立場だった<割れたグラス>2025/06/28

Willie the Wildcat

61
前半が大統領、後半が大臣の名言を体現。旧宗主国、信仰、格差、人種、司法制度などの様々な社会問題を問題提起する前半。心底にたどり着こうと、主人公が自他に対峙する後半。呪術vs.”ノート”。他者に聞いて欲しいという渇望を秘めた心底、および「生」の糧と証の手段が共通項。差異は、手段の精神性vs.物理性。前者は、理不尽な世の中でのささやかな願いや安らぎという精神性。一方の後者は、文字起こしという物理性。バーの店名に込めた思い?頭に浮かぶのが、「今を真摯に生きる!」かな。ママ・ムフォア、印象に残る存在だ。2025/08/26

アーちゃん

52
2005年発表、2025年日本語版発行。ピリオド、章立ては一切なく、あるのは「ノートの前半部」と「ノートの後半部」のみ。最初の≪頑固なカタツムリ≫がバーを開いたところもめ事がおき同級生の大臣の吐いた言葉が流行したのに嫉妬した大統領を語る部分は『BRUTUS』で読んでいるのにもかかわらず引用だらけの文でやはり読みづらかったが、妻のために獄中生活を送った≪パンパース男≫や前妻との息子に妻を寝取られた≪印刷屋≫のエピソードからのめり込むように読んだ。 ノートの作者≪割れたグラス≫は64歳。ラストは悲哀を感じた。2025/10/26

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