聖職と労働のあいだ - 「教員の働き方改革」への法理論

個数:1
紙書籍版価格
¥3,520
  • 電子書籍
  • Reader

聖職と労働のあいだ - 「教員の働き方改革」への法理論

  • 著者名:髙橋哲【著】
  • 価格 ¥3,520(本体¥3,200)
  • 岩波書店(2025/06発売)
  • ポイント 32pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784000615389

ファイル: /

内容説明

教師という職業は,なぜこれほどつらい仕事になってしまったのか? 本書は,教師が主体性を奪われ,現在の異常な労働環境へと至った歴史的・法制度的構造を明らかにするとともに,多くの問題が指摘される給特法を徹底的に分析する.教師が子どもと向き合う職業であり続けるために,厳しい現状からの「出口」を示す決定版.

目次

序章 「働き方改革」vs.「教育の充実」の罠──なぜ問題なのか、なにを問題にしなければならないのか?
1 「○○くんだけに付き添っていることはできない」
2 「ささいな日常」の映す本質
3 苦痛にあえぐ教師の声
4 労働者と「聖職者」の分断?
5 本書の構成
第I部 給特法の制定までとその後──なぜ、つらい職業となってしまったのか?
第1章 教員給与の法制史──「あるべき給与体系」をめぐる相克
1 はじめに──なぜ教師の労働条件は重要なのか
2 教師の労働条件の基本原則
3 教員に特殊な手当とルール──給特法と人確法
4 小括──「政治的決着」に委ねられた教員の労働条件
第2章 教員給与の新自由主義改革──二〇〇〇年代以降の制度改変
1 はじめに──教員給与の「屋台骨」の喪失
2 国立学校準拠制の廃止──教員給与法制の屋台骨の喪失
3 揺らぐ労働基本権制約の論理──代償措置の不在状況
4 国立学校準拠制廃止後の教員待遇──東京都における教員給与制度改革
5 小括──「意識」「文化」に還元できない多忙化の要因
第II部 給特法の解剖──本当は何が問題なのか?
第3章 給特法の構造と矛盾──ゆがめられた教職の「特殊性」
1 はじめに──給特法というミステリー
2 労基法上の労働時間規制ルール
3 給特法の構造
4 一九七一年国会審議にみる給特法の立法者意思
5 小括──矛盾だらけの給特法
第4章 二〇一九年改正給特法の問題──迷走する「学校における働き方改革」
1 はじめに──給特法「改正」で働き方改革は進むのか?
2 改正給特法の上限指針
3 捻じ曲げられた一年単位変形制
4 一年単位変形制導入のハードルと決定プロセスの重要性
5 小括──問われる教育の地方自治、学校自治、そして労使自治
第5章 改正給特法における「労働時間」概念の問題──労基法を潜脱する「在校等時間」論批判
1 はじめに──「労基法の労働時間概念」がなぜ重要なのか
2 給特法の特殊ルールをめぐる諸説
3 文科省の示す労働時間概念の問題
4 小括──学校に「労基法上の労働時間」概念のメスを
第III部 給特法問題の出口を求めて──司法による是正と新たな制度モデルへの展望
第6章 司法による教育政策是正の可能性──給特法をめぐる従来型裁判の類型と争点
1 はじめに──「敗訴」の歴史のなかで「新たな訴訟」をさぐる
2 従来の教員超勤訴訟の類型
3 埼玉教員超勤訴訟にみる「労基法上の労働時間」該当性
4 小括──教員の働き方改革における裁判所の役割
第7章 埼玉教員超勤訴訟第一審判決の意義と課題──「画期的」な理由と乗り越えるべき壁
1 はじめに──第一審判決の評価をめぐって
2 第一ステージ──その仕事は「労基法上の労働時間」にあたるか?
3 第二ステージ──賃金請求権(損害賠償請求)は認められるか?
4 教育労働に固有な労働時間をめぐって
5 小括──教員多忙化問題の「出口」を求めて
第8章 学校における働き方改革のオルタナティブ──アメリカにみる教員に固有な勤務時間管理モデルの可能性
1 はじめに──働き方の国際比較からみえてくること
2 アメリカの労働時間法制における学校教員の位置
3 教員の労働基本権と教員組合の地位──ニューヨーク州テイラー法の特徴
4 団体交渉で獲得した「教員に固有の勤務時間管理」──ニューヨーク市学区の団体交渉協約
5 コロナ禍の教員の働き方ルール
6 小括──労働条件決定における労使自治の重要性
終章 教員の働き方改革のあるべき方向
1 給特法のもとでの三六協定締結の可能性
2 不可欠な立法政策
3 教員に固有な労働時間を求めて
4 教師をいじめる教育政策に終止符を
5 「教師が教師でいられない世の中」を変えるために
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

しょこぴ

1
本書は、教員の多忙化の背景にある給特法の問題を、法制史的観点、文科省の解釈の点、埼玉県超勤訴訟の判決の観点などから考察している。教員の給与形態が国立学校公教員に準拠する形で給特法が制定されたが、国立大学法人化に伴い、あるべき「給与体系」が立法によって実現されてこなかったことや、文科省による時間外勤務を「自発的行為」と解釈することの問題点を指摘している。また、埼玉県超勤訴訟を取り上げ、そこから教員が学校と三六協定を結ぶことでできる可能性や団結権、団体交渉権、団体行動権が保証されるべきとしている。2025/06/16

mokohei

1
本書とは直接関連しないが、「聖職と労働」の文脈は恐らく60-70年代に語られていたものとは相違しているだろうし、その切り口から議論を考えてみるのもよいように思う。特に「専門性の必要性→教員の自律性の強化→非統制的な教員の環境の常態化→過重労働の測量困難化」みたいなパスの可視化が必要に思える。2022/12/28

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/19781299
  • ご注意事項

最近チェックした商品