内容説明
東京での暮らしに見切りをつけ、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住んだミステリ作家の三馬太郎。地元の人の誘いで居酒屋を訪れた太郎は、消防団に勧誘される。迷った末に入団を決意した太郎だったが、やがてのどかな集落でひそかに進行していた事件の存在を知る――。連続放火事件に隠された真実とは? 池井戸作品初の“田園”小説として、「小説すばる」連載中から話題を呼び、テレビドラマ化もされた珠玉のミステリ。第36回柴田錬三郎賞受賞作!
目次
第一章 桜屋敷の住人
第二章 だんじり祭り
第三章 消防操法大会始末
第四章 山の怪
第五章 気がかりな噂
第六章 夏の友だち
第七章 推理とアリバイ
第八章 仏壇店の客
第九章 没落する系譜
第十章 オルビスの紋章
第十一章 或る女の運命について
第十二章 偽の枢機卿
最終章 聖地へ続く道
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
151
★★★★★★☆☆☆☆2023年にドラマ化された池井戸潤の長編。伸び悩む作家の太郎は、移住した父の故郷・ハヤブサ地区で消防団員となる。入団直後に周辺で不審火が連続していることを知るが、容疑者と思われた男が突然失踪し――。序盤は消防大会や町おこしなど長閑な展開が続くが、死体が転がり、更にカルト教団の関与が明らかとなる辺りから不穏さを増していく。教団に内通しているのは誰なのか。作中の「明智小五郎賞」はもちろん「江戸川乱歩賞」のことだろう。だとすれば、太郎はやがて経済小説で名を馳せる人気作家になるのかもしれない。2025/06/19
ピース
31
たまたま立ち寄った父親の故郷に魅せられて、そこに移住してきたミステリー作家の太郎。そこで出会った人に誘われ消防団に入る。それから不審な火事が続発する。又、怪しげな人物が太陽光発電を勧誘してるが、これらの裏に新興宗教が絡んでるようだ。いきなり都会からやって来た太郎があっさり地元に受け入れられたのはさておき、普通にミステリーとして楽しめた。2025/09/22
金吾
24
予想外の話の展開に驚きつつも、テンポのよさで最後まで一気に読んでしまいました。面白かったです。2025/06/26
nafko
22
読み始めて、途中でドラマに移行。なるほどね…と理解したつもりで再開したら、ずいぶん改変されてることに気づいた。「続きは来週!」となるドラマと、ページをめくるごとにどんでん返しできる小説とでは、展開を変えたわけだ。どちらも面白いと思った。舞台が母の地元近辺で、住民の方言が懐かしかった。子どもの頃に交流のあった親戚も、もう鬼籍。でもあのイントネーションは余裕で脳内再生できる。2025/08/09
morinokazedayori
21
★★★★映像が目に浮かぶような、くっきりとした描写の数々。自然豊かな土地で、人とのつながり、しがらみが交錯する。人物の描き方も巧みで、それぞれの内面も見た目も鮮やかに立ち上がってくる。楽しくよめた。2025/09/08