内容説明
給食調理員として働くことになった人気中年俳人が、すべての人々へお届けする圧巻の175句。
あらゆるものごとを全否定、全肯定し、生まれ変わった姿をさらけ出す最新俳句集。
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僕は僕が思ふ給食のをばちやんをこれから体験してくる。
歌舞伎町のチンピラがどんな「をばさん」になるのか自分でも楽しみだ――(「はじめに」より)
包丁を水に沈めて春惜しむ (四月二十一日)
ペスカトーレロッソじつとできない子 (五月二十四日)
麦味噌や昭和の夏は暑からず (六月二十二日)
夏痩せの肩をエプロンずり落ちて (七月十日)
名月をつくる身分となりにけり (九月二十九日)
ぽたーじゆのぽたぽたぽたと秋ふかむ (十月十九日)
鮭喰へば北が恋しくなりにけり (十一月六日)
沖縄のもづくに冬を教へたる (十二月十五日)
ビビンバの明るさだけの冬の昼 (一月二十四日)
手作りのゼリーに気泡日脚伸ぶ (二月七日)
鮫の味知つてゐるなり卒業す (三月十五日)
こんな愚かな自分が好きだし、僕には愚かさを笑ひにかへ、あたたかく受け入れてくれる俳句がある。
愚かな人間にこそ俳句は必要だ――(「あとがき」より)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
39
表紙絵の通り、をばさんではなくおっさんが小学校給食を調理する毎日を書いた俳句。私の予断と偏見だが、春夏の句はそのまんまを描いているだけなので、後半の秋冬の方が好みだった。「じやがいものつぶされなれし横つ面」じゃがいもマッシュはよく作るけれど、はたかれ続けた横っ面なんて感じたことがなかったので、よくぞ見つけたと思う。「ブロッコリーの最小単位としての粒」これも確かにと共感した発見!花蕾の集合体だから、一番小さい粒ってどれ?と見直してしまう。「食パンの耳はいつでも冬である」というず~ず~しい断言が川柳的で好き。2025/08/13