内容説明
沖縄では、米軍基地に対する態度と、自身のナショナル・アイデンティティの位置づけが結びつくような状況がある。2022年9月、両者の複雑な関係を明らかにするために行われた世論調査は、沖縄県民3800人を対象とし、1000人以上から回答を得た大規模なものになった。本書は、その結果から見えてきたものを示す。
目次
序章 沖縄におけるアイデンティティと米軍基地問題 熊本博之・田辺俊介/1 復帰50年をむかえた沖縄のアイデンティティ/2 本書で用いる世論調査データの概要/3 本書の構成/4 本書における用語法について/第1章 アイデンティティ──沖縄における多様性と複層性 田辺俊介/1 沖縄における「アイデンティティ」/1‐1 沖縄における「アイデンティティ」とは何か?/1‐2 沖縄の歴史とアイデンティティ/1‐3 測定される「アイデンティティ」/2 自分は「何人」か?/2‐1 自身の定義としてのアイデンティティ/2‐2 誰が、どのアイデンティティを抱いているのか/3 何によって「沖縄人」「日本人」を定義しているのか/4 アイデンティティの多様性とその影響力/第2章 階層──沖縄における格差と政治 田辺俊介/1 沖縄における社会階層/1‐1 沖縄における階層構造の現在/1‐2 沖縄の階層構造とその歴史性/2 社会階層と政治意識の関連/3 沖縄における階層と政治意識の関連性/3‐1 沖縄における階層分布とそのアイデンティティとの関連/3‐2 社会階層と政治意識/4 沖縄における社会階層と政治意識/第3章 若者──基地意識の世代差の背景にあるもの 米田幸弘/1 世代差を問う視点/2 基地意識からみる若者の傾向/2‐1 「オール沖縄」との距離感/2‐2 「理不尽さの感覚の弱さ」と「消極的な容認」/3 補論 加齢効果なのか世代効果なのか/4 基地意識の世代差はどこから来るのか/4‐1 世代差の要因をめぐる4つの仮説/4‐2 仮説の検証/5 異なる言論空間、異なる世代経験/第4章 政治──県知事選の投票行動と反基地運動に対する評価 松谷満/1 「民意」を理解するための3つの問い/2 なぜ知事選で革新(オール沖縄)候補が勝てるのか/3 なぜ若い世代では革新(オール沖縄)候補が勝てないのか/4 なぜ反基地運動への共感は広がらないのか/5 明らかになった「民意」/第5章 辺野古移設──賛成する人たちの葛藤 熊本博之/1 断絶と分断/2 普天間基地の辺野古移設についての意識状況/2‐1 辺野古移設への賛否/2‐2 辺野古移設をめぐる意見の現状/3 辺野古への移設に葛藤を抱える人たち/4 普天間基地移設問題が沖縄社会にもたらしたもの/終章 復帰50年の沖縄世論 熊本博之/1 プレスリリースへの反応/2 基地負担そのものへの評価と投票行動/3 基地反対運動への評価/4 ナショナル・アイデンティティと階層/5 溝を埋め立てるために/補章 沖縄県における/関する世論調査──「沖縄とは何か」を探る軌跡 高橋順子/1 沖縄県における調査、沖縄県に関する調査/2 復帰前の世論調査──世論形成/復帰の方法/格差是正/2‐1 政府、自治体等による調査/2‐2 新聞社、放送局等のマスメディアによる調査/2‐3 大学、学術団体、シンクタンク等による調査/3 復帰後の世論調査──復帰評価/米軍基地/文化的資源/自立/3‐1 政府、自治体等による調査/3‐2 新聞社、放送局等のマスメディアによる調査/3‐3 大学、学術団体、シンクタンク等による調査/4 沖縄県における世論調査の特徴/5 沖縄県における世論調査一覧/あとがき/参考文献