筑摩選書<br> 戦争と西洋 ――西側の「正義」とは何か

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筑摩選書
戦争と西洋 ――西側の「正義」とは何か

  • 著者名:西谷修【著者】
  • 価格 ¥1,760(本体¥1,600)
  • 筑摩書房(2025/06発売)
  • ポイント 16pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784480018236

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内容説明

20世紀に世界は二度の全面戦争を経験した。主権国家が並び立つ国際秩序を確立した〈西洋〉が、外部を征服し「世界化」したそのとき、世界中を巻き込む大戦争が起こったのだ。総力戦と化した戦争は核兵器を生み、戦争は人類破滅を招きかねない「不可能」なものとなった。にも拘わらず、世界大戦終結から80年、世界はふたたび全面戦争への傾斜の上に立っている。冷戦終結が世界の平和をもたらすはずではなかったのか? なぜこうなったのかを西洋精神史を参照項に検証する。

目次

第一章 世界戦争とは何だったのか/世界戦争から八〇年/戦争と人間を考える/〈世界戦争〉を準備したもの/世界化の成就と崩落/コラム(1)なぜ〈西洋〉の語を用いるのか/第二章 戦争と西洋──〈世界戦争〉への道/戦争は政治の〈例外状態〉/クラウゼヴィッツの〈絶対戦争〉/〈西洋〉とその外部/〈西洋〉と〈西側〉/〈西洋〉の誕生と自己確立/〈西洋〉の世界進出と国際秩序/世界戦争はヨーロッパから/第三章 「冷戦」の基本構造/戦争のイデオロギー化/ソヴィエト連邦とは何だったのか? /米ソの非妥協的対立と〈西洋〉の更新/第四章 核兵器とは何か/戦火を抑える「冷たい戦争」/究極兵器としての原子爆弾/「使い途のない否定性」/「キューバ危機」/核の抑止力/コラム(2)「ベトナム戦争」について/第五章 西洋の次なる「敵」と新しい「正義」/「冷戦の終結」がもたらしたもの/「東西」分割の更新/ヨーロッパの「火薬庫」/ユーゴ崩壊と「民族浄化」/NATOの「人道的介入」/湾岸戦争/新たな「正義」の醸成/コラム(3)非同盟諸国会議と第三世界/第六章 戦争とメディア/マス・メディアが「想像の共同体」を作る/ドメスティックなナショナル・メディア/報道の自由とイデオロギー/グローバル・メディアとそのカウンター/「グローカル」メディア、アルジャジーラ/「メディア・ウォール」を破る/コラム(4)プロパガンダからPRへ──E・バーネイズの役割/第七章 「テロとの戦争」はいかにして起きたか/「アメリカの世紀」/中東地域のイスラーム化/西洋化とイスラーム/「九・一一」の衝撃/コラム(5)イスラーム社会と政教分離/第八章 「テロリスト」という非存在/「第三の立場」の排除/圧倒的「非対称」の戦争/「テロリスト」に人権はない/「テロリスト」指定の裏側/第九章 戦争の「民営化」/「自由の国アメリカ」の力と繁栄/ケインズ主義の行き詰まりと新自由主義の台頭/国家の「民営化」/戦争の「民営化」/ネオコンとネオリベの同行/コラム(6)アメリカ合州国(United States of America)/[閑話休題]加速する時間の先に/第一〇章 「アフガン戦争」とは何だったのか/「テロとの戦争」の端緒/アフガニスタンとはどんな国だったのか/「最貧国」への「報復」/「解放」すなわち体制転換/「テロとの戦争」は続く/「虫けらの国」の放棄/第一一章 イラク──「ならず者国家」の市場解放/イラク戦争への道/クウェート侵攻の論理と湾岸戦争/イラクと「悪の枢軸」/「衝撃と恐怖」作戦/「奴を捕えた(We got him!)」のメディア・スペクタクル/国家資産の「自由化」と「テロリスト」の掃討/イスラーム国の出現/コラム(7)イラク戦争と「ショック・ドクトリン」/第一二章 文明のための「衛生的」な戦争/「テロとの戦争」のパラドクス/グローバルな監視社会化/世界秩序を保つ外科手術としての戦争? /〈悪〉を駆逐する近代医学/免疫が「テロ」を予防する/第一三章 核の恐怖とテロリズム/異次元を開く技術/科学文明のターニング・ポイント/「聖なるもの」の威力と怖れ/「コナトゥスのない敵」と抑止論の破綻/「世界外‐非存在」エイリアンの砂漠/「テロル(恐怖)」の正体/第一四章 ウクライナ戦争が炙り出す〈西側〉の欺瞞/〈西側(オクシデント)〉の再浮上/「この道」はどこに導く道なのか/ロシアとウクライナ対立の前段階/「第三の立場」はない? /公論・メディアの一方向性/「平和会議」という戦争支援談合/〈西側〉を外から見る/「レコンキスタの時代」とヨーロッパの欺瞞/コラム(8)フランケンシュタイン症候群/第一五章 イスラエル──ガザ攻撃に見るアメリカとの相同性/ガザ攻撃とウクライナ戦争との違い/ハマスはなぜ攻撃したのか/ジェノサイド──未来を絶やす/オスロ合意以降の抵抗運動のイスラーム化/「テロとの戦争」の隠れた原型/アメリカとイスラエル、国家創設の相同性/第一六章 ヨーロッパと反ユダヤ主義/キリスト教世界の成立とユダヤ人/「神への信」の錯綜、ユダヤ教とキリスト教/異教徒としてのユダヤ人/「反セム主義」の誕生/宗教的カテゴリーから「人種」概念へ/神話的ナショナリズムとしてのシオニズム/ヨーロッパ的「反ユダヤ主義」の欺瞞/「西洋」とイスラエル/第一七章 〈世界戦争〉八〇年後の世界/デジタル式思考が排除する〈第三項〉/できない戦争が再び正当化される/ヨーロッパの「なすべき戦争」/イスラエルの「建国戦争」/メディアは戦争をどう語るか/ユニラテラルな報道/何が回帰しているのか? ──「西洋の没落」/「戦争の文明」の転換期/[付論] 二〇二五年初頭、今、アメリカで何が起こっているのか? /トランプ再登場と西側世界のパニックのなぜ? /ヨーロッパへの介入とアメリカン・イデオロギー/アメリカの「政変」──国際関与派(グローバル・エリート)とラフな不動産屋/イデオロギーとエリート・シンジケート/グローバル関与派と「西側」(ヨーロッパ)/日本のとる道、自立と第三の道/あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

msykst

10
勉強しようと思って読んで、めちゃくちゃ勉強になった。「西洋」という問題の歴史と構造、そしてその(勝手な)論理に世界がどれだけ振り回されてきたのか、そしてそれがいかにウクライナ戦争やパレスチナ問題に帰結したのか。2025/06/26

Go Extreme

1
https://claude.ai/public/artifacts/d3269712-92e3-41b8-9439-c616c683f428 2025/07/21

くろうさぎ

0
哲学者なので現実を一般化・単純化し過ぎと思います。ウクライナ戦争の理解は的を射ているとしても、アメリカやイスラエルを主語で語り、内部の多様性を無視して、その本質は何かと論じるのは乱暴でしょう。両国とも移民によって時代によって人びとの意識が変わっています。市場対国家という図式も単純過ぎます。注で資本主義は幻影であるかのように書いて、議論の俎上に上げていないのも、本書の弱点です。情報や科学技術についても誤解が多いと思いました。2025/08/02

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