内容説明
『永遠の仔』『悼む人』……感動を送り続ける著書の進化、一大エンターテインメント誕生!
ビートルズが日本を訪れてコンサートを開いた一九六六年。昭和四一年。日本の片隅で、或るおぞましい事件が起きた。私にとっては、忘れがたい……というより、いまなお当時の光景といい、匂いといい、感触といい、生々しい記憶で胸が焼かれるような想いがする事件である。加えて、あの悲しみに満ちた出来事には、表向き解決した内容――すなわち、裁判になったり、新聞記事になったりした事実とは、また別の驚くべき真相がある。たとえば被害者の数は、公表された数よりも、はるかに多かった。――「プロローグ」より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
215
天童 荒太は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか、昭和伝奇ミステリ、金田一耕助オマージュ作品でした。著者のミステリはイマイチの気がしますが、続編が出たら読む予定です。 http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=75452025/07/15
パトラッシュ
176
一貫して現代社会の生理的矛盾が生んだ犯罪を描いてきた著者が、今度は昭和レトロな探偵小説とは無謀な挑戦とも思える。横溝正史ファンとして書きたかったらしいが、正直『家族狩り』や『永遠の仔』が絢爛たる色彩に満ちた巨大な絵画とすれば、こちらは水彩画か素描画だ。探偵も犯人も周辺の人物も強い個性を持たず、時代の流れに追い立てられて困惑しながら生きている。戦争が庶民に及ぼした狂気と悲劇を背景にしても、松本清張や水上勉に比べれば取ってつけたような感覚が拭えない。何だか金田一少年の父親が活躍する話を読まされた気分になった。2025/07/25
しんたろー
132
天童さんが初の試みに挑戦ということで興味津々で…昭和41年の田舎を舞台に、警視庁広報部・国生を語り部にして、流しのギター弾き兼探偵・鯨庭の活躍を描いた物語。後書きにあるとおり、横溝正史オマージュと言えるが不気味さやトリックは薄味で、人情や昭和レトロを楽しむ内容。所々に挟まれる著者注がユーモアも交えていて昭和世代には懐かしい。ミステリとして驚きがないのが残念ではあるが、鯨庭に主人公らしいスター性を感じるし、探偵ものへの愛情が伝わってくるのが嬉しい。謎解きや怪奇さを濃くして「鯨庭シリーズ」として続けて欲しい。2025/08/05
ちょろこ
125
流しの青年は名探偵の一冊。時は昭和41年。とある村のとある事件をギター背負った流しの青年、鯨庭行也が探偵役となり解決するミステリはまさに金田一耕助ばりの世界観。村の因習も絡めながら不気味な事件が連続だけれど、掴みどころのない鯨庭のキャラがほんのり明るさを感じさせる様は、金田一耕助が白黒からほんのりカラー化したような感じでなかなか面白かった。何より天童さんの楽しさに触れられたのが良かったな。複雑な事件の根っこに悲惨な時代のやるせなさがきちんと盛り込まれていたのもいい。優しさエキスもまさに金田一愛がいっぱい。2025/09/17
タイ子
111
これが天童荒太の作品とは面白い。新鮮、かつ遊び心のあるエンタメ作品になっている。時代は高度成長期の昭和が舞台。主人公の鯨庭(イサニワ)は流しのギター弾きで、この物語を結実させる名探偵なのである。著者の謝辞の通り、これはまさしく横溝正史の世界観を彷彿させる物語。不気味な因習の村にある目的で招かれた鯨庭たちが遭遇することになる連続殺人事件。旧弊な村で過去に起こったある出来事。戦争の犠牲者、加害者、そして事件への思いを熱く語る鯨庭に感動さえ覚える。文章の合間に昭和の事象など解説するのが新鮮。シリーズ化が嬉しい。2025/08/21




