内容説明
『永遠の仔』『悼む人』……感動を送り続ける著書の進化、一大エンターテインメント誕生!
ビートルズが日本を訪れてコンサートを開いた一九六六年。昭和四一年。日本の片隅で、或るおぞましい事件が起きた。私にとっては、忘れがたい……というより、いまなお当時の光景といい、匂いといい、感触といい、生々しい記憶で胸が焼かれるような想いがする事件である。加えて、あの悲しみに満ちた出来事には、表向き解決した内容――すなわち、裁判になったり、新聞記事になったりした事実とは、また別の驚くべき真相がある。たとえば被害者の数は、公表された数よりも、はるかに多かった。――「プロローグ」より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
174
天童 荒太は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。著者の新境地でしょうか、昭和伝奇ミステリ、金田一耕助オマージュ作品でした。著者のミステリはイマイチの気がしますが、続編が出たら読む予定です。 http://www.kadokawaharuki.co.jp/book/detail/detail.php?no=75452025/07/15
パトラッシュ
134
一貫して現代社会の生理的矛盾が生んだ犯罪を描いてきた著者が、今度は昭和レトロな探偵小説とは無謀な挑戦とも思える。横溝正史ファンとして書きたかったらしいが、正直『家族狩り』や『永遠の仔』が絢爛たる色彩に満ちた巨大な絵画とすれば、こちらは水彩画か素描画だ。探偵も犯人も周辺の人物も強い個性を持たず、時代の流れに追い立てられて困惑しながら生きている。戦争が庶民に及ぼした狂気と悲劇を背景にしても、松本清張や水上勉に比べれば取ってつけたような感覚が拭えない。何だか金田一少年の父親が活躍する話を読まされた気分になった。2025/07/25
buchipanda3
94
「鯨の庭と書いて、イサニワです」。題名の通り昭和レトロな探偵小説。先へと読ませる筆致で雰囲気ある作品を味わえた。戦後の名残が消えゆく昭和40年代初めの山あいの村、場を不思議と和ますユニークな風体と名前の探偵、そうあれのオマージュ。倉に残る因習めいた不気味な絵画、村名に隠されたもの、村民の不穏な態度、それらの意味が徐々に集約されていく。水たまりの残像描写が何気に効果的。終盤のあの一撃にまさかとギョッとなった。鯨庭の欠点の無さがあれだがそこは今風かなと。最後の真相究明は定番の。著者謝辞を読むとひょっとしたら。2025/07/12
のぶ
83
今までの天童さんの作品世界とは大きく異なっていて戸惑ったが、作品自体はとても面白かった。横溝正史の探偵小説の世界が、こんな形で味わえたことが楽しかった。作品の舞台は昭和41年。まだ自分は小学生だったけれど、ビートルズの来日公演も何となく覚えているし、巻末の謝辞にある「犬神家の一族」の映画公開のことは自分もよく覚えています。懐かしい昭和の世界にどっぷり浸る事ができて本当に良かった。2025/07/02
ケンイチミズバ
81
最初は奥田英雄かと思いながら横溝正史だなと思った。頭をかきむしる金田一へのオマージュ、ここでは探偵は耳たぶを引っ張ると閃く。立てこもり犯の要求は、ここに(来日中の)ビートルズを連れてこい。で、冒頭のつかみはイイ。本題に入ると、これが懐かしいカドカワ映画を彷彿させる。あの時の助清が彼で、刑事が彼で、死体をわざわざ晒しものにする意図があり、尽忠村は実は人柱村といういわくありげな名称で。昭和がどんな時代だったのか現代との比較コメントもあり、笑わせてくれる。ミステリーの謎解きまでの展開に中弛みがあり、次回に期待。2025/07/04
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