内容説明
謎の男が仕掛ける、前代未聞の犯罪劇!
『イッツ・ダ・ボム』で犯罪小説界に新風を吹き込んだ超新星・井上先斗が松本清張賞受賞第一作として世に放つのは、前代未聞の犯罪劇!
「――君は自信が欲しいんだ。
よかろう、与えてやる。
ただし、困難な道のりにはなる」
姫に飛ばれて300万円の借金を抱える元ホストの森有馬。
自信も金もない、しょうもない自分に嫌気が差している。
そんなときに飛び込んできた“うまい話”。
怪しいのはわかっている、それでも。
待ち合わせ場所にいたのは、真っ青なスーツに身を包んだ胡散臭い男だった。
ジンと名乗るその男が有馬に課した「七つの試練」。
こなすたびに数万円の報酬が支払われる。
そして最後の試練を成し遂げたその時、
〈500万円〉と自信が手に入る、らしい。
「必ず、意識をしてほしい。
自分が、いま行っているのは非合法な何かへの助走だと」
果たして有馬は、ジンに課された試練を乗り越え、自信を手に入れることができるのか。
ノワールの新世代が贈る“現代版アラジン”がいま、幕を開ける!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
118
金に窮したホストくずれの青年有馬が、謎の男ジンに誘われて誘拐犯罪計画に加担する。いかにもな挫折した青春の物語だが、通常なら成功のためなら手段を選ばず闇堕ちするストーリーになるところを、あえて有馬を一歩手前で踏み止まるキャラに設定した。ジンの命令に従っていれば大金を手に入れられる安易な道を選ばず、苦しい未来が待っていると知りながらプライドを優先してしまう不器用な生き方を選んでしまう。しかしSNSを通じて安易に詐欺や強盗に加わる若者の話を日々聞かされていると、きれいごとではない奇妙な清涼感を覚えてしまうのだ。2025/09/22
美紀ちゃん
66
元ホストの有馬は借金があり今はUberの配達をしている。うまい話がありのることに。何か犯罪の準備をさせられている。でも脅されているわけではなく「試練」と言われている。乗り越えたくなる性格の有馬。犯罪実行日、自分が何をやらされているのか?わからないけれど、多分誘拐?でも実行犯ではなく、それを助ける役。捕まるかもしれないというスリルが伝わってきてドキドキした。 ラストは、意外な終わり方だった。 自首はしたくないのが普通では? 仲間になっても良かったのでは? これでいいのか?ちょっと結末に納得できなかった。2025/07/23
オーウェン
56
元ホストの有馬は300万の借金がある身。 返済のため怪しい依頼を受け持つことに。 それは7つの試練をこなせば500万が手に入るというもの。 219ページしかないので、とにかく勢いで最後まで続く形。 ただ特に捻りとかはなく、驚く真相などもなし。 金の件は予想できるしね。 もう少しページを増やして、キャラに厚みを持たせないとかしないと物足りない印象だった。2025/08/07
練りようかん
20
タイトルのしっくりこない感じが主人公の人物像に投影されていて面白い。同級生に気付かれないキツイ体験の後、陥っている状況がわかると中途半端という文字が浮かんだ。心理分析の興味深さと手を差し伸べた男から香る闇に引っ張られるが、何の犯罪に加担させられるのかが怖い。同窓会で虚勢を張ってもカッコ悪い未来図しか見えず、いざ計画遂行となるとわからなくてページを戻り、ずっと暖簾に腕押し。しかし終盤の男同士の会話でシュルシュルっと回収される気持ち良さを味わえた。本筋とは関係ないが移動の描き方から地理学好きそうだなと思った。2025/07/25
yosa
19
前作の方が刺激的だった。というのは正直な感想だとしても間違いなく誤解を生む。クライムノベルではありますが、今作の主人公は感情移入し易いタイプなので前作のような突っぱねるタイプのクールさは大分薄れて刺激が弱くなっていますがそれはそれ。しかしその分没入感に優れます。帯の惹句に惹かれて絶対読むと決めたのは間違いではなく、すっと物語に入り込んで愛李くんと一緒に世田谷を駆けずり回りました。そして茉莉が私の彼女でないことを愕然としました。悪女か? オチがやや弱いのですがこれは好みかな。私は好き。次回作にも期待します。2025/07/08