内容説明
自ら命を絶った青年が残したという1冊の句集。元教師の俳人・作田慮男は、かつての教え子から依頼を受け、俳句の解釈を進める。沖縄の情景を描いた句を読み解いていくうち、恐るべき秘密が浮かび上がってくる(「皐月闇」)。遊廓で蝶のような花魁たちと遊ぶ夢を見る男の末路、広い庭を埋め尽くす色とりどりのキノコがもたらす幻覚。静かに忍び寄る恐怖と緻密な謎解きが読者を圧倒する3編を収録。著者真骨頂のホラーミステリ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
119
貴志さんの「秋雨物語」に続いての作品です。短編というよりも中編が3作収められています。俳句と蝶ときのこ(それぞれ「皐月闇」「ぼくとう奇譚」「くさびら」という題名)が主題となっている感じです。さまざまなしかけがほどこされています。わたしは2作目が印象に残りました。2.26事件直後の東京で永井荷風も出てきたりします。最後はあっという感じです。3作とも謎があり復讐のような感じもします。2026/02/24
イアン
116
★★★★★★★★☆☆『秋雨物語』の姉妹作となる貴志祐介の中編集。隠居生活を送る作田の元にかつての教え子・菜央が訪れる。「自死した弟が遺した句集の意味を読み解いて欲しい」との依頼を受け、俳句に込められた真意を探り始めるが――(「皐月闇」)。タイトルどおり湿度の高い3編が収録されているが、特に13もの俳句に込められた意味が、ある時点から反転する「皐月闇」が秀逸だ。俳句と短歌の違いはあれど、詩の解釈を巡るミステリとしては、長江俊和の『出版禁止 死刑囚の歌』以来の衝撃といえる。隠された罪が暴かれる、戦慄の奇譚集。2026/05/30
レモン
43
ホラーよりミステリー色が強かったため、『秋雨物語』よりさらに読み進めやすかった。『ぼくとう奇譚』は想像すると気味が悪く、ホラー耐性が今よりない頃に読んでいたなら数日夢に出てきそう。『皐月闇』の読者にピンと来させるよう、徐々に真相に近づいてくる展開も堪らない。あれだけのことをしてもまた忘れ去られると思うと、痛快さより虚しさが勝ってしまうが。なんだかんだでずっと怖がりながらも著者既刊本をほとんど読めているので、『さかさ星』をスキップするかで迷っていたがトライしてみようか。2026/02/10
ちょん
30
(19冊目)蜷川実花さんの写真見てるみたいに鮮やかなお話だったなぁ。「ぼくとう奇譚」と「くさびら」が特に美しい。映像でも見てみたいと思ってしまう。キノコのミステリーサークル🍄2026/01/24
Porco
26
全体的にミステリの色と俳句,遊郭,狂言と和の要素が強い。【皐月闇】2人の入れ替わりで行われる俳句の解釈による謎解きに挟まる、老人作田の猜疑心や暗い感情の発露はまさに不穏なホラー。【ぼくとう奇譚】時代小説作家のような小物や用語を配置し、グロテスクで苦い結末にゾッとする。【くさびら】突如現れたキノコの幻覚の秘密。前二作品と異なり主人公自身は善人だったり2人の霊能力者だったりシリーズものの短編作な印象。三作とも巧みな文章力が光るいい怪談でした。2025/10/06




