内容説明
ドラマ「相棒」などの脚本家としても活躍し、『未明の砦』で大藪春彦賞を受賞。骨太の社会派サスペンスの書き手として独自の存在感を発揮する太田愛のもう一つの顔。日本推理作家協会賞候補となった「夏を刈る」、半自伝的小説「給水塔」を含む待望の第一短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
206
★★★★★☆☆☆☆☆ノスタルジックな世界観に浸る太田愛の短編集。由緒ある屋敷の解体作業中、井戸から50数年前のものと思われる白骨死体が発見された。記者の「僕」は当時女中として勤めていたさよという女性を訪ねるが――(「舞踏室 夏を刈る」)。社会問題を扱った骨太エンタメの印象が強い太田作品。今作でも旧優生保護法やジェンダー問題を扱ってはいるが、どちらかと言えば人間の内面に焦点を当てた作品が多かった。凛とした筆致には文学性を感じる一方で、『犯罪者』シリーズのような疾走感を期待すると肩透かしを食らうかもしれない。2025/10/01
いつでも母さん
160
ちょっと何言ってるのかわからない・・この表題。だけど魅かれてしまうのは何故?久しぶりの太田さんは5話の短編とエッセイ。1話目〈十月の子供たち〉読み始めるとすぐに状況が分かる。そして、辛い。2話目の〈サイレン〉切ない読後感。ガツンと映像が浮かびゾクゾクした〈夏を刈る〉そうかこの短編集は喪失なんだなと一人ごちる。〈鯉〉これもまた堪らなく好みだ。〈給水塔〉と最後のエッセイを読み、そう言えば私の遥か子供の頃、ハッキリ言葉にできない〈何か〉感じた時期を思い出した。大人になったら感じる事も無くなってそれもまた喪失かー2025/08/03
しんたろー
157
太田さん新作は得意の重厚で映像的な社会派サスペンスではなく、文学の香り漂う5つの短編集と短いエッセイ…読み始めはファンタジー?と思わせて実はシリアスな寓話『十月の子供たち』、団地でのある男の一生を描く昭和文学風の『サイレン』、日本推理作家協会賞にノミネートされたミステリ『夏を刈る』、閉ざされていた記憶を辿る『鯉』、私小説のように小学生女子の夏休みを描いた『給水塔』…不穏な空気があるのに懐かしさを感じる不思議なタッチで、味わい深く感じ楽しめたし「脚本家ゆえに、今までとは違うチャレンジをしたのかな」と思った。2025/08/26
モルク
156
病院の長~い待ち時間に読了。5話の短編集+エッセイ。1話目からこれはファンタジー?近未来、いや中世?不思議な世界、読んでいるうちにその切ない世界にどっぷりつかった。2話目も団地に住む友人同士の話と思いきや、え~?と何度も前の文をいったり来たり。切なさの残る作品ばかり、余韻が半端ない。どの作品にもやられた~!2025/11/10
hiace9000
151
五短編通じて立ち上がる、ノスタルジーに横たわる深閑たる寂。主人公たちが経験するのは記憶の虚実の境にある甘やかで切ない痛みか、死と生のあわい恐怖と愉悦か―。骨太社会派サスペンス第一人者の太田さんが、内包していた"文学の種"を、掌を開いて"見せた"ようにも。各短編に共通するのは、薄いヴェールがかかったセピア色の過去に眠る、朧気な事実を抱き止めるような、不思議な切なさと温かさが。それが独特の味わいと共に読み手の胸に刺さる。異界・異形の記憶との邂逅を格調高い文体と美しい詩的描写で織りなす、太田文学&ミステリー集。2025/11/17
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