内容説明
追うべきは、殺人事件か、企業スパイか――
事件記者と調査報道班の相克
吉川英治文学新人賞受賞作『ミッドナイト・ジャーナル』に続く、渾身の社会派ミステリー!
「社長は人として許されないことをした。だから告発しようと思った――」
中央新聞長野支局の事件記者関口豪太郎は、一人の青年の訃報に耳を疑った。
昼間知り合ったばかりの好青年が、深夜に溺死体となって発見されたというのだ。しかも青年は偽名を使っていた。疑念を抱いた豪太郎は取材に乗り出す。
一方、東京本社の調査報道班は、ある新興企業の不正疑惑を追っていた。やり手の社長が犯した“人として許されないこと”とは?
内部告発者が突然の失踪を遂げるに及び、調査報道班は社長のルーツを辿って長野へ向かう。
絡み合うそれぞれの事件の先に見えてくる真相とは――?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
160
本城 雅人は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 本書は、熱血新聞記者社会派ミステリでした。新聞自体が終焉を迎えつつあるので、新聞記者も絶滅危惧種かも知れません。 https://www.sun.s-book.net/slib/slib_detail?isbn=97843966367912025/08/23
パトラッシュ
142
新聞記者が取材中に嗅ぎ取った犯罪を追うミステリは珍しくないが、本作は新聞社内部の派閥や先輩との衝突など人間模様に重点が置かれる。記者出身の作家だけに一番得意な分野だろうが、追跡する事件と有機的につながらずチグハグだ。事件を起こす犯人側もハイテク開発を巡る産業スパイ疑惑を導入するなど新機軸を目指すが、金と権力目当ての卑小な悪のイメージが強く描写が手薄になった感は否めない。どちらか一方に集中するか、レクター博士並みの大犯罪者を登場させるかすべきだったと思う。中途半端が二乗しても中途半端なままではないだろうか。2025/09/17
ゆみねこ
72
中央新聞長野支局の事件記者・関口豪太郎は知り合ったばかりの青年の訃報に疑問を持つ。深夜に溺死体となって発見された青年の死は自殺として処理されそうになるが疑念を抱いた関口は取材に乗り出す。一方東京本社の調査報道班はとある新興企業の不正疑惑を追って長野へ。複雑に絡み合う2つの案件につながりが見えてからの展開は畳み掛けるようで面白さが増した。長かったけど満足の1冊。2025/07/05
hirokun
55
★4 今回の本城さんの作品は、新聞記者もの。彼の記者作品は、どれも安定した面白さがあるように思う。調査報道としての深堀はともかく、新聞記者魂、警察官の誇りは少し古臭いかもしれないが、私の心を打つものがあった。推理小説としても面白く、一気読み。2025/07/11
海の仙人
45
地方廻りの事件記者が追う溺死事件と本社の調査報道班が追う新興企業の不正疑惑が繋がりを見せるとき、二つの事件の裏に隠された真実が明らかになっていく。小さな端緒から真相究明に奔走する新聞記者の姿に引きつけられ読了。関口記者も徐々に丸くなっていく感じですが、でもこんな記者がいるから警察や検察、企業の悪事が白日の下に晒されるんですね。読み応え十分でした。2025/09/09