内容説明
美しい色。美しい香り。時間をかけ心を尽くして旬を集めることは、わたしの生活そのものだ――。知らない土地に古民家を買って宿のオーナーシェフとなり、各地から訪れる人をもてなすようになった著者。春はふきのとうを摘み、竹の子を掘る。夏は草を刈って桃をかじる。秋は柿を干して鹿肉を焼き、冬は薪を割って柚子を蒸す。12か月の味わい深い物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
68
【なんてことのない顔をして、みんな大した人生を生きている】二人の子どもと知らない地に来て、葡萄畑に囲まれた築130年の古民家宿舎「遠矢山房」に引っ越したシェフの日々の軌跡を綴るエッセイ。<雪柳が小さな無数の花をつけている。/食べられる草を摘むのに夢中になっている間に、ただ咲き、ただ揺れている。季節は巡る。時間は薬であると信じるに足る2年間の日々を、こうして本に記す機会に恵まれたことがうれしい。人生は思うほど険しくはないようで、善く生きようと願って目を凝らせば、本当に美しいものになって、叶えてくれる>と。⇒2026/03/12
kum
26
築130年の古民家に子供たちと暮らし、美味しい料理でゲストをもてなし日々自然に触れる生活。その側面だけ見たらただただ素敵に見えるが、想定していなかった人生の転機に揺れる心を、「ただ目の前の道を這って」立て直してきたこともひしひしと伝わってくる。希望と絶望を繰り返しながらも生活は続き、助けたり助けられたりしながら時間は多くのことを癒してくれる。美しく静かな文章に触れながら、そのことを自分も感じられた1冊だった。2025/10/28
信兵衛
20
本書を読むとそのまま、遠矢山房での暮らしを一緒に過ごしているような気分になり、とても居心地がいい。 気持ちが洗われるような気持ち良さを感じるエッセイです。2025/09/05
うー (ハクナ・マタタ)
18
『たとえ、あるカップルが幸せそうに見えても、不幸せそうに見えても、それで私の幸せが半分に目減りしたり、逆に増えることはない』『お鉢が回ってくる事が人生にはあって、機が熟してそれに見合う器になった人に、見合った時、見合った形で声がかかるように采配されているのだと私はそう思っている』とても丁寧に大切に日々を生きてある。強い人だと感じた。2025/10/11
みやこ
14
山梨県で築130年の古民家を改修し宿を営む文筆家の寿木けいさんのエッセイ。開業からの1年間を、宿で提供した旬の料理とともに綴る。伝え聞いていた憧れの人の近況を、本人から「こんな1年を過ごしていたのよ」と聞かされたような心地がし、嬉しさとともに腑に落ちる思いだった。各章に紹介されている、土地の恵みを生かしたすてきな料理がとてもおいしそうだったし、宿の全景を見てみたいと思った。一方で「根性」でバッハのアリアに挑む姿に親しみも覚え、少し作者と親しくなれたような気持ちになった。生きることは手を動かすことなのだ。2025/08/09




