内容説明
小雨降る4月の晩、作家・舟倉按は知己の編集者から『文学的自叙傳』の執筆を依頼される。実家の焼失、父の失踪、震災。巡る記憶の果て、その「マイ・ブック」はloueを語りうるのか? たくらみと愛にあふれる、芥川賞受賞第1作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
175
鈴木 結生、2作目です。芥川賞受賞第一作、著者が、文学、芸術、音楽に造詣が深いのは解りますが、完全自己満足&自己陶酔小説、売れない芥川賞作家まっしぐらです。 https://publications.asahi.com/product/25379.html 2025/07/10
シナモン
98
難しかったー。独特な文体に苦労しながら置いてかれないように必死に読む。どれくらい理解できたか怪しいけど、漂う知的な空気感が好きな感じの一冊だった。ー本当の人間関係というのはネタ切れから始まるのだ(P55より)2025/07/06
踊る猫
30
ぼくの怠慢・無教養を差し引いても、たぶんにこの小説とぼくとは「不幸な出会い」なのかなと思う。実に知的なたくらみや仕掛けを精巧に凝らした1作であることは疑い得ないけれど、あくまで「ぼくは」その知性が勝ちすぎて仕掛けどおりに書かんとするあまり、小説自体が著者の手を離れて肉感的にこちらを魅惑する運動を開始する契機を見失っているのではないかとも思うのだ。著者が込めた思いをおそらく半分も読み取れていない不肖の読者の戯言ではあるが、ただ思いの詰まったメッセージ以外の「余剰」も読ませるふくらみに欠けてギスギス感を感じる2025/10/05
ぽてち
28
『ゲーテはすべてを言った』で第172回芥川賞を受賞した作家の受賞後第1作。人気ファンタジー作家の舟暮按(ふねくらあん→アンネ・フランクのアナグラム?)が、知り合いの編輯者に薦められて自傳を書くことになり、これまで辿ってきた人生を振り返る物語だ。旧字体や当て字を多用した文体、横文字が入り乱れるスタイルは前作同様だ。タイトルはディケンズの小説『大いなる遺産』から取られており、作中にも多くのトリビアが登場する。それ以外にも本筋とは関係のないあれやこれやがてんこ盛りで、読み進めるに苦労したが愉しかった。2025/06/28
メタボン
25
☆☆☆☆☆ 読書家にとっては愉悦をもたらす小説。英文学、英語の造詣が深いからこそ書ける技(loveの古語loueの扱いなど)。この若さでこれだけ書けるのは末恐ろしい。ファンタジー作家の按の語りを通じて、作者の小説技法を感じられるところは大江健三郎っぽいし、文学のテクストを換骨奪胎していくところは丸谷才一を想起させる。追い続けたい作家。2025/07/14
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