内容説明
米国で何者かになろうと海を越えた青年、夫の海外転勤に合わせて渡米した女性、人生に詰んで海外へ拠点を移した男性──。異国の地で、不安定さや傷つきに揺れながらも、そのとき成しえる最良の力で人生にぶつかっていく。その語りに、若き日の著者が耳を傾け、生きるということを同じ目線で考えた記録。解説 奈倉有里
目次
文庫版まえがき/はじめに/孤独の物語/アメリカン・ドリーム/移民候補生/リミナリティ/PTSD(前編)/PTSD(後編)/ステレオタイプ/恋愛と結婚/邦人援護/二〇歳の人生落伍者/謎の女/パレスチナ/レクイエム/GOOD BYE=THANK YOU/あとがき/解説 ひとりひとりの顔が見える 奈倉有里
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
41
人生で何らかの課題や不安を抱えた状態にありながらも、その対話にはどこか穏やかな雰囲気が漂う。読む者もまた、癒される思いがする。プライバシーの問題からフィクションとしているが、そのエッセンスは実在する人々であると思う。彼らのその後が気に掛かる。2025/05/04
ほう
29
海外に住む人々の精神的な状態を綴るエッセイ。いろいろなケースが記されていて重い内容の場合もあるが、どれも優しい目線で描かれている。彼らのその後が気にかかるけれど、読みやすい本だった。2025/07/24
R子
17
著者が米国留学時に話をきいた日本人たちの記録。米国に住む/留学するときくと華やかなイメージを持つけれど、どこにいても悩みや迷いは付き纏い、さらに異なる言語・文化を受け入れ生活していくことは、母国にいて抱く感情よりもずっと深く重いものがあるだろう。傷、停滞、再生。その変化は緩やかで一直線ではなく、再生を求めて動いた結果が傷を深くしてしまうこともある。それでも、何度揺れても、生きるのだ。とても良かった。2025/04/19
ザビ
11
前書きが好きすぎる。「傷のあわいってなんだろう。あわいとは二つのものが交わったり重なったりしている領域のことをいう。例えば淡水と海水が混じる汽水域。例えば明け方や夕暮れ時。昼と夜のどちらともつかない時間帯…どちらでもあり、どちらでもない。どちらの要素も混ざり合い、にじみ合っている」人生で傷を負った人が、様々な感情を抱える「あわい」な状態を受け入れながら、前へ進もうとする姿を描いたエッセイ。人生の傷は癒えたのか、残ったままなのか。「その周辺には切なさ、寂しさ、喜び、希望…など様々な心の動きがあり、そして→2025/04/23
aki
7
とても優しい文章を書く人だと感じた。アメリカでは1980年代後半で既にアサーティブの市民講座が開かれていたことに驚いた。他の著作も読みたい。2025/06/08




