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内容説明
『こんぴら狗』で児童文学賞をトリプル受賞した今井恭子先生が、心の傷を抱えながらも他者との関わりを通し、力強く成長していく等身大の子どもの姿を描いた物語。
戦後1950年代、英治は商店で賑わう街の履き物屋に生まれ、総勢十一人が暮らす家で育った。5歳の春、一緒に遊んでいた3歳の弟裕也を亡くして以来、弟が死んだのは「ぼくのせいだ」と英治の心には罪悪感が住み着いてしまう。養蜂を営む叔父信三と過ごす和歌山での日々などの非日常的な体験を通し、抱えた罪悪感を少しずつ消化していく英治は、9歳の夏に蝋燭と炎の絵ばかりを描き続ける、絵師と名乗る女と出会う。「子どもを殺した」と自分を責め続けている女に、英治は「ぼくも弟を殺した」と事故のことを打ち明ける―――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
71
今井恭子さんは児童文学の作家だが、これは5歳の英治の目線で描かれた戦後色が残る昭和28年~の大人の物語だと感じた。戦死したと思われていた一家の長男の思いがけない帰還や養蜂で暮らしを立てる叔父、二つの家族が住む大家族の家の様子、恐ろしい廃屋。これより10年ほど後に英治位の年頃で大家族の友人の家の様子や、戦争で亡くなった伯父の写真、濃い近所付き合い等を思い出した。英治の弟は2階から落ちて亡くなる。昔は子どもが亡くなることも今より多かった。幸せは身近にあり不幸も身近にあった。懐かしく、切なく暖かい読後感。2024/11/07
joyjoy
15
自分の親世代が子どもだった時代の物語。皆が何かしら哀しみを背負って生きていて、その分、人を思いやることができたのかな。家族や親戚、ご近所さんとの交わりが深いだけ公然の秘密も多くあったかもしれないが、誰にも言えない心の秘密を、ここぞという場面で大事なひとと分かち合う場面にグッときた。校長先生の訓話「人には親切に」ではないが、勇気を出して心を開くことで、自分自身が癒されたり成長したり、成仏できたり?するのかも。読み返すと「おあいこか」は絵師から英治への「ありがとう」のようにも思える。タイトル、表紙画も素敵。2025/01/10
雪丸 風人
15
人にも自分にもやさしくなれる物語。戦争の傷跡が残る時代の商家を舞台に、重いトラウマを抱える少年が荒波にもまれながら成長していきます。傷痍軍人の話は私の心にもグサリと刻まれました。子どもを子ども扱いしない養蜂家の叔父さん、魅力的ですね。傷ついた少年のために、彼がする思いがけない働きかけが沁みましたよ。女絵師のエピソードでは、二人して感情を吐き出す場面が圧巻でしたね。さらにラスト。失礼ながら変なタイトルだと思っていたのが「これしかない!」へ引っくり返る妙技に、心から満たされた!(対象年齢は12歳以上かな?)2024/11/15
manamuse
14
いろいろ伝えたいことがあるんだな…と。全体的に不穏な感じがしてなんか怖い。電報のシンプルさが新鮮。2024/12/30
柊子
10
カバーのイラストが美しい。タイトルも秀逸。ストーリーは児童書と言うより、大人向きでは? 女絵師との絡みなど、不思議な雰囲気の中、胸に迫るものがある。100年も?描き続けていた蝋燭が、やっと燃えた……こういう展開は好きだ。でも、子供にはなかなか理解できないだろうなあ。初読みの作家さん。面白かった。2025/03/06




