内容説明
日露戦争に「負けた」日本。終戦から 11 年たった大正 5 年、ロシア統治下の東京で、身元不明の変死体が発見された。警視庁刑事課の特務巡査・新堂は、西神田署の巡査部長・多和田と組んで捜査を開始する。だがその矢先、警視総監直属の高等警察と、ロシア統監府保安課の介入を受ける。どちらも、日本国内における反ロシア活動の情報収集と摘発を任務とする組織だった。やがて二人は知る。ひとつの死体の背後に、国を揺るがすほどの陰謀が潜んでいることを…。警察官の矜持を懸けて、男たちが真相を追う! 不動の人気を誇る警察小説の旗手が、魂を込めて描いた圧巻の歴史改変警察小説!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
105
フィリップ・K・ディックの「高い城の男」的な設定。佐々木譲さんの北海道警シリーズファンだったが、こちらもシリーズ化されるのかしら。占領下の日本という状態が気にはなるし、ウクライナの状況を考えれば冗談じゃないが、警官物としては秀逸。余談:数年前に訪れた敦賀の港に近い洋食屋さんの入口にあった注意書きがキリル文字だった。この作品でも敦賀港が出てくるあたりに想像力もふくらんだ2023/08/03
ふじさん
81
日露戦争に負けた東京を舞台にした小説、このようにありえたかもしれない別の歴史を背景とした小説をSFの世界では、オルタネート・ヒストリーと呼ぶ。部署の異なる2人の警察官が捜査を始めた身元不明の変死体事件には思いも寄らない謀略の存在があった。ロシア統監府、日本の高等警察、陸軍の思惑と使命が絡み合い、怒涛の展開。主役の2人の警官魂が凄い、そこには巨大な権力に左右されない現場警官の矜持と佇まいがあった。設定には多少の違和感があったが、なんとか最後まで読み切れた。いつもの彼の作品ほどにはのめり込めない自分がいた。 2024/11/25
キムチ
61
執筆は1年半余前❓何故にこのテーマと。実際にあった大津事件を冒頭に置き、日露緊張の様を想起させる。歴史改変とは言え、対米の学生蜂起をモデルにおき SFの形をとり 筆者が語りたかったものは何だろう。実際、世界経済、核を巡っての思惑で世界の力学地図改変が語られる現状を思うと警察小説の形をとりのストーリーは生ぬるいと言えなくもないが。統監府保安課、対露勢力の暗躍、そして新堂自身が受ける襲撃・・些か状況粗すぎといえなくもない?。コルネーエフ大尉の人物像も掴みがたく模糊。この舞台の僅か20年余前にはちょんまげだった2022/03/09
楽
24
19年。直木賞作家で著名な作品もあるが本書が初読み。21年に買って積んでいたものを、ロシアのウクライナ侵攻を見て急ぎ読むことにしたが、正直それほど面白くなかった。日露戦争で日本が敗北した歴史改変小説なのだが(シミュレーションではなかった)、警察、陸軍、ロシア統監府、どれも一枚岩ではない組織の内輪揉めで、警察、公安、内調などが争う現代ものと舞台が変わっただけ。展開もあまり盛り上がらず、何が「抵抗都市」なのかもよくわからず。冒頭の大津事件の描写は何だったのだろう。頻出する「~だが。」と街並みの描写が気になった2022/04/19
たーさん
22
安定した面白さの佐々木さんが描く警察小説。本部の若い刑事と所轄のベテラン刑事が河川で発見された殺人事件を追う警察小説では極々普通の設定なんだけれども時代設定が大正時代で日露戦争でロシアに負けた日本というSF設定の歴史改変警察小説。二人の刑事、本部刑事課の特務巡査の新堂裕作と西神田署の和多田巡査部長は今までの佐々木警察小説の刑事さん達の造形のが散りばめられた感じ。話も2日間の話で「代官山コールドケース」や「犬の掟」と同じ短い時間で捜査に緊迫感を与えます。捜査小説からテロを阻止する冒険小説に移り変わる→2022/03/03