内容説明
フェミニズムを目撃する新しい紀行文学
「女性、命、自由!」デモの叫びが響くテヘランで、ニコラ・ブーヴィエの名著をたどり直す冒険が始まる──。
『世界の使い方』は〈僕〉にとって聖典のような存在だ。彼が旅した景色を自分で確かめるのが長年の夢だった。パリからテヘランに向かう飛行機では、一睡もできなかった。携帯電話にフランス外務省からの着信があり、イランで監禁される危険性を告げられていたからだ。
22歳のクルド人女性が、「不適切な服装」を理由に道徳警察に逮捕され殺害された……マフサ・アミニ事件をきっかけに、イラン全土で抗議運動が起きていた。そのデモ活動に参加した、同じくZ世代で16歳のニカ・シャカラミも被害に遭う。女性たちが髪を風になびかせながら抑圧に立ち向かう姿を目撃し、〈僕〉は、イランの過酷な現実を突きつけられる。砂漠が広がる大地の上、「死者の背後では千の心臓が鼓動する」。
テヘランからエスファハーン、ペルセポリスを経てザーヘダーン、サッゲズに至る縦断記は、傷ついた世界を生きる者のため「世界の傷口」に命がけでペンを差し入れる新しい紀行文学。アカデミー・フランセーズ賞受賞の作家の日本デビュー作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
291
フランソワ=アンリ・デゼラブルはフランスの新進作家。とはいえ、これまでに上梓した4作(本書は4作目)のすべてがベストセラーになっており、アカデミー・フランセーズ賞を受けるなど評価も高い。本書はニコラ・ブーヴィエの『世界の使い方』へのオマージュであり、彼らの跡をたどるイラン行である。当時のイランはマフサ=アミニの事件をきっかけに、ハメネイ師の独裁体制への抗議行動が渦巻き危険な状態にあった。「国民の自由は北朝鮮と同程度、経済はベネズエラ並み、医療制度はバングラデシュとそれほど変わらない」イランに何故行くのか⇒2025/02/04
どんぐり
91
ニコラ・ブーヴィエが1953年にイランを横断した旅行記『世界の使い方』。その足跡をたどる旅に出たフランス人のノンフィクション。コロナパンデミック後の2022年末、著者はイマーム・ホメイニ国際空港に到着。旅の行程は同じであっても、外国人にとっていまのイランは、北朝鮮と同程度に何が起きているのか全くわからない。この年イランでは、ヒジャブ着用をめぐって道徳警察に連行され撲殺されたマフサ・アミニ事件があったばかり。外国人にとってイラン国内を旅行することは全く不向きな場所である。→2025/01/21
キムチ
56
いやはやの内容・・仏でベストセラーだからと言って、優れた内容とは言えない。仏のセンスと日本のそれが同じなんて猿芝居。筆者は元サッカー選手、執筆業に手を染め、次々とベストセラーを放つ。フーンとしか言えないが。お前は何言いたいんや!喝入れられそうだけど、個人的には欧米白色の上から目線的タッチが鼻につく。イランは歴史的にはとてつもないものを秘めた大国。すっかりムスリム化した現代では中東戦争、人権性差 シリアとの関係等などきな臭い。服装の乱れという罪状で拘留されたクルド人22歳の女性。拘留中に殺害されたことが国内2025/03/15
ヘラジカ
47
紀行文学というと遠い国であるばかりか遠い時代を記したものを読むことが多いのだが、この作品はコロナ禍直後であり、しかも今まさに戦端が開かれようとしているイランが舞台なのである。シンクロニシティと言おうか。良いタイミングというと語弊があるかもしれないが、今このとき読めたことを感謝したい。ユーモラスな旅行記のなかで凄絶なる歴史やそこで闘う人々が活写されており、軽妙感と荘厳さのバランスが素晴らしい。決して長い本ではないが得られるものが非常に多い傑作紀行文学であった。この作家は小説も是非読んでみたい。2024/09/26
星落秋風五丈原
37
見知らぬ電話番号からの電話を受ける著者。電話先はフランス外務省だ。「イランへの渡航はやめてください。残っているフランス人は、退避中か拘留中です。イランは法治国家ではありません。渡航は中止してください。」 しかし電話を受けた時は、既に著者はテヘラン便に乗っていた。まるでドラマの始まりみたいなオープニングから始まる本書はノンフィクションだ。イランの最も印象的だった思い出は、パーレヴィ国王が逃れてホメイニ師が返り咲いた時の人々の興奮ぶりを映すニュース映像だ。独立国家としてやっていく高揚感に溢れていた。2025/02/21




