内容説明
広瀬すず主演で映画化! 2025年夏公開
英国で暮らす悦子は、娘を喪い、人生を振り返る。戦後の長崎で出会った母娘との記憶はやがて不穏の色を濃くしていく。映画化原作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
87
女性の苦悩と哀しみが繊細に描かれる。戦後、考え方が180度変わったことを嘆き教え子と口論する男は過渡期の象徴だろう。女性は違う。子供を抱える女性は自分のことだけでなくその日を生きなくてはならない。二人とも戦前は良家の子女だったのか、英語が話せ、海外生活の経験やバイオリンを習ったことがあったり。それが今ではうどん屋で働く、噂ではアメリカさんの愛人なのかも。佐知子の幾度も口にする今度こそアメリカに渡れる。トラウマを抱える娘は言動がオカシイ。母娘の身の上を案じ渡米を疑った悦子だったが、自身が佐知子と同じ選択を。2025/07/09
はっせー
63
本書はカズオイシグロさんのデビュー作の新訳である。感情の機微をこんなにも丁寧に描いた作品がデビュー作なの!?と驚く作品😂1950年代長崎。朝鮮特需に沸き、風景や価値観が急激に変わっていく。その変化に戸惑いながらも生きていく悦子と変化に順応し幸せを掴もうとする佐和子。この2人の対比をまず味わえる。だが、単なる二項対立で終わらないのが、カズオイシグロ😆その中に世界の不条理感や隠し続ける想いなどをうまく編み込んでいる。そのため小説の層がめっちゃある!クロワッサンみたいって1人で思っていた😄2025/08/22
NAO
60
映画公開を前に再読。戦争で何もかも無くし、それまでの価値観が崩壊した世界。そんな世界で、自分のアイデンティティを保つのは並大抵のことではない。佐知子や緒方は過去の固定観念に囚われたままのタイプとして描かれている。緒方は過去にしがみついてそこから離れようとせず、佐知子は過去の名声に見合うものをつかもうともがいている。一方で、名家の夫人だったけれども生きるためにうどん屋を始めた藤原さんや悦子はこれから前を向いて生きていく人として描かれている。この話のミソは、アメリカに行きたがっている佐知子の姿が⇒2025/09/01
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41
🌟🌟🌟☆☆。映画を鑑賞後読了。正直、難易度は高めで(部分、部分で解りはすれど)映画を観ていなければちょっと俺には伝わって来ない作品だった。ひょっとしたら挫折したかも知れない。映画の方がメッセージ性があり掴みやすかった。原作は文章以上に行間が読めなくては字ヅラだけ追っていても全体像は掴み辛い。上級者向けの作品。もし、カズオ・イシグロを読んだ事がない初心者の方は映画を先に鑑賞した方が良い。2025/09/22
olive
38
はっきりとした答えはない。答えがないから自分なりに解釈し想像するしかない。それをじっくりと味わう作品だった。80年代イギリスで暮らす悦子が長崎での日々を回想する物語。景子という娘を妊娠中に友達になった佐知子とその娘の万里子との交流。奔放な佐知子と扱いにくいの子の万里子。夫や義父を甲斐甲斐しく世話をする悦子。考えや行動が対比する二人の女性。読み進めていくと...違和感。この違和感が読みどころ!終始...薄暗く静寂な部屋に淡い光が差し込むような静謐な物語に包まれ秘密の世界へと誘われた一冊だった。2025/09/03