内容説明
文学は、私たちの人生や社会に対して、どんな意味があるのだろうか。──
人間の生を真摯に見つめ、現代の問題群に挑み続ける小説家が、文学の力を根源から問う。大江健三郎、瀬戸内寂聴ら、先人たちの文業にも触れながら、芸術や社会へと多岐にわたる自らの思考の軌跡をたどり、読者を新たな視座へと誘う。
『ある男』『本心』『富士山』を執筆しながら、平野啓一郎は何を考えていたのか。創作と時代を映すエッセイ・批評集成。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
134
平野さんの随筆は、いつも深い思索に導いてくれる。表題の講演で、著者は「「役に立つのか」でなく「価値があるか」と問い直すべき」と語る。役に立つかどうかで二分する現代社会の冷たさへの反問である。ドストエフスキー/森鴎外/安部公房/三島由紀夫/大江健三郎に対する文学論も鋭い。三島さんと大江さんを同時に評価する平野さんに戸惑いを覚えることもあったが、文学者が確乎とした思想を持ち、それを小説という形で社会に問うという意味では、今、平野さんこそが、文壇でのその役割を引き継いでおられるのだろう。味わい深い一冊だった。2025/08/23
kaoru
98
平野氏の講演録・エッセイ集。コスト・リスク管理が進むと同時に言葉がきわめて混乱状態にある今の世界で文学は「正気を保つために必要」だという。デビューした1998年から大きく変貌した世界に彼は絶えず発信し続けてきた。AIの進化、愛読してきた三島由紀夫への批判、トーマス・マンを好きになったきっかけ、ドストエフスキーの登場人物の分析など聡明かつ明晰な文章が続く。深く胸を打つ瀬戸内寂聴、大江健三郎、ドナルド・キーンへの弔辞やハン・ガン作品への賛辞も。映画『オッペンハイマー』と原作を対比させ林京子がロスアラモス→2025/11/19
明るい表通りで🎶
75
いったい文学は何の役に立つんですか? 今の世の中で正気を保つため。文学作品を読むということは、精神的な健康を保つ、有効な手段になっている。2026/01/06
yumiha
44
これまでに発表されたエッセイや批評を文学・芸術論に特化してまとめた本書。だから、タイトルとなった章も30ページ余りの小文だったので物足りなかった。興味深く読んだのは『オッペンハイマー論』の章。一昨年公開された映画のノーラン監督の視点を踏まえてのオッペンハイマーの姿は、知らなかったこと、映画で気づかなかったことなど、ふむふむと読ませてもらった。例えば、オッペンハイマーの栄光と挫折という表面的な鑑賞だった私は、ノーラン監督が問題提起していた場面を大方見逃していた💦『祭りの場』(林京子)の視点もよかった。2026/02/09
akihiko810/アカウント移行中
34
小説家・平野の、エッセイ、弔辞等がまとめられた一冊。「文学は役に立つのか」というテーマの講演。印象度B 平野 啓一郎 は、小説は未読で、「私とは何か――「個人」から「分人」へ」という新書を読んだだけだが。本作も、このような新書で、ずばりのテーマに対する答えが書かれている本かと思っていたのだが、講演原稿の書き起こしだった。問いに対しての答えもはっきりとは出していない。 さて、「文学(というかアート全般)くらい、役に立たなくてもいい。面白ければいい」と私は思っているのだが(そして、これが世の(続2025/10/17




